業務中の人身事故による企業責任と防止策

先日の栃木でのクレーン車事故。児童6人の尊い命が失われました。

容疑者はもともと発作を伴う持病(てんかん)があったにも関わらず、免許取得時や更新時、健診時に申告していなかったそうです。

事故当日は薬を飲み忘れ、発作を起こした上での事故であったようです。

 

そこで今回は次の2点についてみていきたいと思います。

①業務中に人身事故が起きた場合、企業にはどのような責任が生じるのでしょうか。

②このような事故やリスクを防止するために、企業として事前にとっておくべき措置は何でしょうか。

 

 

①は、企業が遺族から賠償請求された場合、企業は従業員が業務に関連して第三者に損害を与えた場合は、賠償義務を負わなければなりません。

そのような場合、企業は従業員に対し求償権を行使できます。(民法715条)

 

従業員に賠償責任があるかどうか、従業員の賠償額はいくらになるかについては、判例(茨城石炭商事事件)によればいろいろな要素から判断されることになります。

 

また企業には従業員に対する安全配慮義務があります。

例えば過重労働による居眠り運転による事故で、企業が安全配慮義務違反で訴えられたりすることもあります。

 

いずれにせよ、業務中の事故により企業も責任を追及されることは十分あり得ます。

 

 

②は、まず採用時に持病があるかどうかの確認は必須です。本人に署名捺印させておくのも手です。ただしプライバシーの問題にもなりますから、業務上関連することだけに留めるべきでしょう。

なお今回の事故では、会社は特に採用時に確認していなかったそうです。(確認しても虚偽されたでしょうが…)

 

更に運転経歴証明書を提出させ、過去の違反・事故歴を確認することも大切です。 

 

また採用後に採否にかかる重大な事項(そもそも採用時に知っていたら採用しなかったであろうというレベル)が見つかった場合、解雇できると解されています

もちろん、その旨を就業規則に規定しておく必要があります。

 

 

やはり企業としては、採用時・入社前のリスク管理が非常に重要です。

特に人手不足などで、すぐにでも人を雇いたい場合に陥りやすい罠でもあります。

 

そもそも本人の虚偽申告がなければ防げたであろう今回の事故。悔やんでも悔やみきれません。


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コメント: 2
  • #1

    Mヨシ (木曜日, 21 4月 2011 12:42)

    難しい問題ですよね。
    雇われる側は、働きたいが為に虚偽をするでしょうし、単なる健康診断では分からない持病の場合は厄介ですね。
    でも、今回の事故は絶対にあってはならないものです。
    容疑者は、たとえクスリを飲んでいるとしても、この様な仕事を選ぶべきではなかった。

  • #2

    tomono (木曜日, 21 4月 2011 23:32)

    そうですね、あとは本人のモラルや危機意識に依存するしかない問題です。リスク管理といっても会社には限界があります。
    この事故も昨今の就職難の産物なんでしょうか…ホント残念です。