日本で一番幸せな社員をつくる!

本の紹介。

4期連続赤字で倒産寸前のホテルアソシア名古屋ターミナルを黒字にV字回復させた、同ホテルの総支配人、柴田秋雄氏の経営哲学(いや人生哲学と言うべきか)が詰まった良書。

口語調で語られていて、柴田氏の思いや人柄がストレートに伝わってくる。

 

同ホテルについては、テレビで紹介されたり、映画にもなっている。

ちなみに、昨年から某旅行会社と組んでホテルや旅館の経営者や支配人向けに人材確保セミナーを開催しているが、そのセミナーの最後に同ホテルの話を紹介させてもらっている。

 

 

支配人就任時に、全従業員150名のうち100名をリストラするよう指示された柴田氏がしたことは、全従業員との丁寧な面談と就職先の斡旋だった。

続いて着手したのは、何と社員食堂の改装とメニューの見直し、そして社員教育。この背景には、従業員が満足度が高く自信が持てなくては、顧客に良いサービスなどできるはずはないという考えがあった。このような「CSの前にES」というのは最近よく聞くが、業績が傾いている状態で実践するのはかなり勇気がいることだと思う。(ただ、柴田氏に言わせれば「そんなの当たり前のこと」となる)

そして次第に従業員にコミュニケーションと自信が生まれ、組織に活気を取り戻していくのだから凄い。

 

柴田氏は、人に対する垣根や偏見といったものが一切ない。

アルバイトであろうが、障害をもっていようが、若い頃に”やんちゃ”していようが、何ら差別することなく一人ひとりに目を向け、常に褒め、気になったら声をかける。面接では履歴書や職務経歴書を一切見ないそうだ。

会社も家と同じ、社員も家族と一緒という、言わば家族主義を貫いている。仕事も生活(人柄)が元になっているから、「人間」を育てることを惜しまない。

その俯瞰的なモノゴトの見方や懐の深さ、本当に感服する。自分の中にあった常識が覆される。もしこんな人と出会えていれば、人生観が変わるんだろうな…

 

そんな職場だから、従業員もみな活き活きと自発的に仕事やサークル活動しているのも納得だ。

従業員の優しさや思いやりが、顧客との強固な信頼関係を構築している。それは、ホテル・従業員と顧客との様々な奇跡的・感動的なエピソードが物語っている。

まだホテルが赤字だったときに、全従業員の給与を10%下げて欲しいと要求したのは、何と労働組合だったというから驚きだ。こんな社風だから、労使トラブルなど無縁だろう。ある意味、最高のリスクマネジメント。

 

 

本書では、売上や利益を上げるためのノウハウやテクニック的な話は一切出てこない。

経営理念「全ての活力の源泉は人である」に象徴されるように、常に人としての優しさをもつことの大切さについて、終始描かれている。

 

きっと多くの経営者は「人として優しさが大切なのは分かる。でもそれと経営とは別だ」そんな風に感じるのではないだろうか。

しかし、実際にESやCSはすこぶる高いし、何より黒字回復させている。これは紛れもない事実なのだ。

柴田氏は、利益ばかり追求する世の経営者を痛烈に批判する。「部下のいいところを見つけられない」とか「部下から意見が出てこない」などと嘆けば、それは経営者・リーダーとして失格となる。

口を開けば「効率化」ばかり叫ばれる今の働き方改革は、柴田氏の目にどう映るのだろうか。

 

  

誰だって人に優しくしたいし、優しくされたい。

そんな人として当たり前のことが、最も大切であることを教えてくれる。


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