基本は民事的な解決

先日、労基署へ労使協定を届出に行った時のこと。

一人の男性が、担当官に話し始めた内容が背中越しに耳に入ってきた。

「今日は、会社の労基法違反を言いに来ました。もう何日も休日労働させられ、何日も休みをもらっていない。その分の賃金も払ってもらっていない…」

 

どうやら内部告発のようだ。生々しい。

 

僕は届出を済ませとっとと部屋を後にしたため、その後の両者のやりとりは知る由もないが、こういう場合、一般的に労基署はすぐには受理せず、一旦話を”持ち帰って”もらい、再度会社と相談するよう促す。恐らく、その男性に対してもそのような対応をとったと推測される。

 

これにはちゃんとした根拠があって、昭和57年に出された通達「監督機関の基本的役割」にこう書かれてある。

「監督機関の基本的役割は、罰則の適用を背景として現に確認し得た法違反についてこれを将来に向かって是正させ、かつ、再び法違反を生じせしめないよう監督指導することにある。既に発生した法違反に係る労働者の不払賃金等の金銭債権の確保については、本来、監督機関の権限に属する事項ではなく、労使間の自発的な協議民事的な手段により解決されるべきものである。~」

 

民事不介入のはずの行政が、民事的解決を促すのはちょっと不思議な気がするけど、これが監督署の基本的な姿勢・役割・初動なのだ。

 

 

最近、ある企業から相談を受けた。

労働者に解雇通知したのだが、「不当解雇、パワハラで労基に訴えてやる!」と言われ、どうしたもんかという内容だ。

僕は「恐らく労基署から連絡が来ると思いますよ。そこで落ち着いて対応しましょう」と伝えたのだが、案の定、次の日に労基署から会社へ、本人ともう一度話し合いの場を設けてはどうかと連絡があった。

結局、社長、本人、そして僕の三者で話をする場を設け、何とか無事に解決に至った。(もちろん、話がスムーズにいくよう”交渉カード”をいくつか用意しておいた)

 

 

重大な労災事故など、一発で労基署が飛んできたり受理する案件ももちろんあるが、再度労使で解決するよう促される案件も少なくない。

無用なトラブルや訴訟リスクを未然に防止したければ、そこでいかに会社側が冷静になり、”大人の”対応ができるかが重要になる。労使トラブルは、平和的・民事的な解決を目指すことが基本だ。


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