◆人事労務トピックス2023

人事労務トピックス 2023.1

 

こんにちは、トモノ社労士事務所代表の三輪です。

 

私事ですが、今年は別法人で新事業を本格的に展開していく予定です。「やりたいことが

あれば、やれるときにやる」という気持ちが後押ししています。人生はあっという間です

からね。苦労も当然あるでしょうが、それ以上にワクワクしています。

 

さて今回は、次について取り上げます。

2023年労働法展望

2 よくある相談事例㉙ 全く違う職種へ異動させることは可能か?

3 新型コロナ関係の助成金・給付金等のリンク集

 

 

2023年労働法展望

 

今年最初のメルマガということで、今年の主な労働法の改正についてピックアップし、概

要をお伝えします。なお、全て4月からの適用となります。

 

①50%割増賃金の支払い義務化

前回のメルマガでご紹介済みですが、いよいよ中小企業にも、4月から月60時間を超え

た法定時間外労働に対して、50%以上の割増率で計算した賃金の支払い義務が適用され

ます。

ポイントをおさらいすると、

・法定時間外労働が対象で、法内時間外労働は対象外。

・法定休日は60時間に含まない。

・深夜業と重複した時間帯は75%割増になる。

・代替休暇を付与すれば、25%分の割増賃金が免除される。代替休暇は、労使協定が必

要。

・50%割増対象者がいる場合や代替休暇を付与する場合は、就業規則の定めが必要。

 

②雇用保険料率の変更(予定)

来年度の雇用保険料率が、使用者負担0.85%から.95%へ、労働者負担0.5%から

.6%に上がる予定です。(率は一般事業の場合)

雇用保険料率は昨年度も二段階で上がりましたが、そのときと同様、雇用調整助成金など

の支給により財源が枯渇しているための措置となります。

 

③出産育児一時金の増額

健康保険の被保険者やその被扶養者が出産した場合の出産費用として給付される出産育児

一時金ですが、4月以降(予定)の出産から、現在の42万円から50万円に増額されま

す。

 

④デジタル給与の解禁

4月から労働者への賃金支払いについて、デジタル給与による方法でも認められるように

なります。代表的なものとしては、PayPayやLINE Pay、楽天ペイ、メルペイ

などです。デジタル給与で払う場合は、就業規則の変更や労使協定の締結、労働者の同意

を得るなどの手続きが必要になります。なお、労働者から求められても、会社は必ずそれ

に応じる義務はありません。とは言え、キャッシュレス決済が進んでいる昨今、デジタル

給与は、(特に若年者の)求人において訴求効果があるかもしません。

 

★詳しくはコチラ→賃金のデジタル払いについて(厚労省)

 

 

 

2 よくある相談事例㉙ 全く違う職種へ異動させることは可能か?

 

普段業務をしている中で、特にご相談が多い事案について取り上げ、分かりやすく会話形

式で解説します。

 

 

社長「年も変わり、またコロナに対する行動規制も緩くなってきた中で、そろそろ思い切

った異動を考えている。その中で、事務職から営業へ、営業職から事務職へ異動させたい

社員がいるんだけど、本人が拒否すると難しいのかな?」

 

顧問「配置転換のご相談ですね。原則論を申し上げますと、就業規則や労働条件通知書に

『配転することがある』という記載があれば、本人の同意がなくても会社が配転命令を出

すことは可能です」

 

社長「なるほど。ウチの就業規則は…ちゃんと『配転することがある』って書いてあるか

ら、異動はOKってことでいいんだよね?」

 

顧問「原則があれば例外もあるのが世の常です。

例えば、職種限定や職場限定の合意をして採用している場合は、労働者の同意が必要にな

ります。その点はいかがでしょうか?」

 

社長「労働条件通知書には異動について記載していないし、また話もしていないから、恐

らく本人たちは職種限定採用だと思っていると思う。ってことは同意が必要なのかな?」

 

顧問「採用時の労働条件通知書に、『事務職』『営業職』と記載があっても、通常は最初

の業務内容という意味に過ぎず、それのみでは職種限定の合意が認められるものではあり

ません。

確かに専門職や特殊技能を要する職種は、職種限定の合意が認められやすいと言われるこ

とがありますが、必ずそうとも言い切れません。アナウンサーに対する編成局への異動命

令が認められた裁判例もあります(九州朝日放送事件)。

また、長年同じ仕事をしてきたからと言って、そのことのみをもって職種限定の合意が認

められるものでもありません。20年以上機械工として勤務した労働者に対する異動につ

いて、そのような判決が下された例もあります(日産自動車村山工場事件)」

 

社長「ということは…異動可能?」

 

顧問「大切なことは、なぜ異動させるのかという業務上の必要性と、それをしっかりと本

人へ説明することでしょう。なお厚労省は、異動の可能性がある範囲を企業が労働者へ事

前に明示するよう義務付ける検討をしています。異動を嫌う労働者は増えているような気

がします。特に採用時に曖昧な対応をしていると、トラブルになる可能性があります」

 

 

ポイントをおさらいします。

・配置転換命令は、就業規則や労働条件通知書にその旨が記載してあれば原則可能。特に

採用時に説明しておく。

・職種限定や職場限定の合意がある場合は本人の同意が必要。(但しそれらの合意は、必

ずしも書面や勤務実態だけで判断できない場合もある)

・配転させる業務上の必要性を精査し、しっかりと本人へ説明する。

 

 

 

3 新型コロナ関係の助成金・給付金等のリンク集

 

新型コロナ関係の助成金や給付金、融資等についてのリンク集です。適宜ご活用下さい。

 

コロナに係る傷病手当金(協会けんぽ静岡)

 ↑コロナ陽性により、(社保加入している)社員が休業した場合に申請できる休業補償。

  申請方法が通常の傷病手当金と異なっています。申請する場合は必ずご確認下さい。

なお、今年から書式が新しくなっています。

 

企業向け新型コロナに関するQ&A(厚労省)

 

雇用調整助成金(厚労省)

 ↑コロナにより仕事が減少した場合等に、休業命令を出し休業させ賃金を払った場合に

申請できる助成金。特例措置は来年3月末まで延長される予定です。

12月以降は、原則的措置の申請の助成率が3分の2に下がっています。

緊急雇用安定助成金は、3/31で終了予定です。

 

小学校休業等対応助成金(厚労省)

 ↑コロナ関係で小学校や保育園等が休校になった場合や、小学生以下の子がコロナ陽性

になった場合に、その子の監護をするために休業した労働者に賃金を払った場合に申請

できる助成金。現在、3/31まで延長されています。

 

小学校休業等対応支援金(厚労省)

 ↑コロナ関係で小学校や保育園等が休校になった場合や、小学生以下の子がコロナ陽性

になった場合に、その子の監護をするために仕事ができない下請の個人事業主に報酬を

払った場合に申請できる支援金。現在、3/31まで延長されています。

 

新型コロナ対応休業支援金給付金(厚労省)

 ↑コロナの影響で休業となったが、休業手当を支払われなかった労働者が申請できる支

援金です。3/31で終了予定です。

 

国民健康保険のコロナ傷病手当金(静岡市)

 ↑コロナ陽性となった(国保加入の)社員が休業した場合に申請できる休業補償。個人

事業主は対象外です。(静岡市以外の市区町村でも同様の対応をしています)

現在、3/31まで延長されています。

 

社会保険料の猶予等(厚労省)

生活を支えるための支援のご案内(厚労省12/23版)

経産省の支援策(経産省12/28版)

支援策パンフレット(経産省12/28版)

IT導入補助金2022

事業再構築補助金(中小企業庁)

 ↑中小企業の思い切った事業再構築に対し100万円~1億円の補助が出る補助金。

  1月16日に第9回公募が開始されました。

 

 

※ここで記載した内容は、あくまでも分かりやすさを最優先に、簡易な表現で一般論・概

要を解説したものです。また個人的な見解を含んでいる場合があります。実際は個々の

ケースにより、対応や解釈が異なることがありますのでご注意下さい。

 

なお、利用者が被ったいかなる損害について一切の責任を負いかねます。