労働協約による年収カット

東電が、役員・労働者の年収カットを含む人件費削減計画を発表しました。

労働組合(以下労組)との協議により、一般職は20%、管理職は25%の年収カットを決定、賠償金等にあてるようです。

そこで今回は、労働協約による労働条件の不利益変更の是非についてみてみます。

 

そもそも労働協約というのは、簡単に言えば「労働組合と会社との書面による約束事」のこと。よって労組がない企業には労働協約は存在しません。

 

さて本題ですが、原則、労働協約による労働条件の不利益変更は可能です。

ただしその効力には一定の限界があります。主な判例とともに簡単にまとめてみます。

 

・労組の目的を逸脱している場合

 【朝日火災海上保険事件】

 定年を63歳から57歳へ引き下げ、退職基準率を切り下げた事案 。

→ 特定の組合員を著しく不利益に取り扱うとして無効。

 

・労働協約締結にあたり適正な手続きがとられていない場合

 【中根製作所事件】

高齢者の賃金を23%切り下げたことに関して、組合大会の付議事項とされていたにも関わらず、代議員会の決議をもって決定していた事案。

 → 労働協約締結過程において適正な手続きがなされていないとして無効。

 

・組合員の個々人の具体的な権利を処分する場合

【香港上海銀行事件】

すでに発生した退職金債権の額を引き下げた事案。

  → すでに発生した退職金・賃金債権権を消滅させることは許されないとして無効。

 

 

今回の東電組合員の年収カットについては、(数字の妥当性はともかく)その目的や社会通念上然るべき対応なのでしょう。