羽生善治講演

先日、羽生善治棋士の講演を聴きに行った。

子供の頃は、家族や(休み時間などに)友人と本当によく将棋を指していた。当時夢中になって見ていた将棋の本の中に、小学生時代の羽生氏が出ていたのを今でも記憶している。5年くらい前に来静され、佐藤九段と対局したときも見に行った。(この時は二百手を超す大将棋だった)

そんな将棋好きの思いが届いたのか、抽選倍率約3.5倍という狭き門だったが、見事当選した(^^

 

 

インタビュアーが質問して羽生氏が答えるという形だった。

以下、特に印象に残った言葉を箇条書きで記したい。

 

・結果がよくないときは「不調なのか実力なのか」を見極める。実力なら真摯に受け止め、不調のときは「方向性は正しい。タイムラグで結果が出ないだけ」と考え、気分転換をする。

・「機は多様なり」。たくさんある一手のうち、どうしてその一手を指したのか、その理由を考えるようにしている。

・相手の得意な戦略や将棋界の流行りもあえて取り入れるようにしている。長い目で見れば自分自身の成長につながる。

・よくオリンピックの選手やアスリートなどが「試合を楽しんでやりたい」と言うが、あれは、試合はリラックスしている状態で臨むのが一番いい、ということなのではないか。緊張には、身がこわばる悪い緊張と、身が引き締まる良い緊張の2つある。

・色紙にはよく「玲瓏」(れいろう)という言葉を書く。玲瓏とは曇りのないまっさらな心境、状態のこと。いいなと思った言葉も先に先輩棋士が使っていた、なんてことがよくある(笑)

・将棋のルーツ、発祥はインドといわれていて、それが西へ行ってはチェスになり、東へ行っては将棋になった。先人たちが試行錯誤しながら400年ほど前江戸時代に今の形を作った。ゲームを面白くするために、通常はコマを強くするとか、盤を広くするといった方法が取り入れられるが、日本は逆でコンパクトにしていった。これは能や短歌などにも共通する、日本文化の特長でもある。

・駒の中で最も好きなのは「銀」。銀というのは、全ての駒のちょうど真ん中の強さで、攻守バランスが求められる。サッカーで言えばミッドフィルダー。

・「歩」を使いこなせれば有段者になれる。実は、歩が応用範囲が最も広い。

・プロは1年中、日本各地で試合があり、試合時間も長くて体力も必要とされる。将棋のルーツは江戸時代にあるということで、家康と縁のある静岡で試合が開催されることも多い。静岡にはもう何十回も来ていて、温暖な気候とお茶のイメージがある。

・加藤一二三氏は現役生活63年だった。将棋界には25年と40年の勤続表彰があるが、63年はそもそも将棋界が想定していなかった凄い数字。加藤氏の凄さをリアルに今実感している。

・藤井颯太さんは10歳くらいのときから知っている。詰将棋大会で三連覇している凄い方だ。

・影響を受けた人は、子供の頃通っていた将棋道場の師。いつも好きなようにやらせてくれた。

・目標を立てて、そこに向かっていくということがあまり好きではない。将来、自分が想像していないような姿になれたらいい。

 

 

確か永世七冠になったときのインタビューで、「盤上はテクノロジーの世界」と言っていたのが印象に残っている。個人的には、そんな近代将棋やAI将棋などについて聴きたかったが、なにせ時間は1時間。あっという間だった。

注目の藤井颯太六段については、つい先日負けたということもあってか、インタビュアーは少々遠慮気味だった(笑)

 

永世七冠になり、そして国民栄誉賞を受賞しても何ら偉ぶることなく、どの質問に対しても淡々とかつ実直に答えていて、テレビで受ける印象と全く同じだった。 

そんな受け答えや立ち振る舞いもそうだが、トップを走り続ける人が、普段一体どんな考え方でものごとを捉えているのか、その片鱗を直接聴けたことは我々凡人にとっては貴重なことで、それが、自分が関心のある分野の人であればなおさらだった。


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