教訓としてのセクハラ騒動

財務省事務次官のセクハラ騒動。

この一件、一般企業の例に置き換えてみよう。

 

①A社の女性社員Aが、取引先B社の部長Bと仕事の関係でスナックに何度か同席

②そこでAはBから何度かセクハラを受ける

③我慢できなくなったAは、ボイスレコーダーにBのセクハラ発言を録音し、A社に報告・相談

④A社は「こんなのは酒の席ではよくあること」「実際に触っているわけではない」と、特段何も対応・対策せず

⑤やむなくAは、ボイスレコーダーの中身をネットにアップ(或いは、週刊文○にネタを売る)

⑥それを知ったB社は、Bに対してセクハラの事実確認をするも本人は明確に認めず

⑦B社は、Aに対する事実確認のため、AからB社の女性顧問弁護士に連絡するようA社へ連絡

⑧A社は、対応の不手際を認めAに謝罪する一方、Aの行き過ぎた行為を注意

⑨B社は、事業運営に支障をきたすとの理由でBに退職勧奨し、Bはしぶしぶ了承

 

 

上のケース、果たして両者の対応はどうだったのか?どうすべきだったのか?ちょっと検証してみよう。

 

①は、そもそも業務外に及ぶ行動(いわゆる接待)が本当に必要なのかは、会社としてまずちゃんと判断すべき。

仮に必要であっても、会社はセクハラの温床となりえる可能性があることを予見し、常に気にかけ対応すべきだ。セクハラは、然るべきところで起こる。

 

④は、特にセクハラは被害者と会社の”温度差””認識のズレ”があることはまま見られる。先方への配慮から”事なかれ主義”に陥りやすい。僕がセクハラ研修でよく言うのは「自分の妻や恋人がされたら嫌なことはしない」ということ。客観的な思考が大切だ。

セクハラは早期発見・早期治療が鉄則。④の時点で、会社は速やかにアクション(まずは先方への事実確認)を起こすべきことは言うまでもない。会社も使用者責任が問われるのがセクハラだ。

 

⑤の社員の行為については、賛否両論あるかもしれない。

会社としては、社内や「公益通報者保護法」による外部の相談窓口を予め設置・周知しておき、まずはそこへ通報してもらうことが何より適切な方法だろう。

 

⑥は、必要に応じて被害者側の会社、或いは被害者本人に直接会って話を聞いた上で、加害者の証言との整合性を確認する方法がよいのではないだろうか。

 

⑦は、加害者側の人間に口を開くのは被害者としてはかなりハードルが高いだろう。

そもそも、このような弁護士の行為は利益相反に該当する恐れはないのか?(ヒアリングするだけなら該当しない?)

ちなみに僕は一部クライアントの外部相談窓口になっているが、相談者の相手側が会社側の人間であれば利益相反になるとして、相談は受けられない旨周知している。

 

⑧は、⑤の行為をした社員を懲戒処分することが可能な場合がある。公表された内容が事実と異なったり、会社の信用が失墜し業績が低迷した場合などだ。とは言っても、元々会社の対応に落ち度があったからこその行為だから、そこは考慮すべきだろう。

セクハラの事実が確認されれば、被害者社員への迅速な対応(担当から外す・医療機関の紹介・心のケア等)をすることになる。

 

⑨は、退職勧奨が行き過ぎて退職強要となると、不法行為・不当解雇で訴えられる可能性がある。

また懲戒処分をする場合は、「セクハラは恐らくあったのだろう」ではなく、明確な事実根拠が必要になる。

その事実が確認されたにも関わらず、加害者に何ら処分をしないと、士気を下げ職場環境を悪化させ、第二のセクハラを誘発する。

 

 

今回のセクハラ騒動をただ傍観・批判するだけではなく、1つの教訓・他山の石にするといいと思う。


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