ついに出た!長澤運輸事件・ハマキョウレックス事件最高裁判決

同一労働同一賃金(正規と非正規の不合理な待遇格差の禁止)を巡り争われていた、2つの事件の最高裁判決がついに出た。

まずは判決要旨を確認してみよう。(日経電子版より)

 

★ハマキョウレックス事件

 

【地位確認請求】

労働契約法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者との職務内容などの違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定。両者の労働条件の相違が20条に違反する場合でも、労働条件が同一となるものではない。ハマキョウレックスも、正社員の就業規則と、契約社員の就業規則は別個独立で作成されている。契約社員が正社員と同一の権利を有する地位の確認を求める訴えは認められない。

 

【損害賠償請求】

20条によって労働条件の相違が不合理であると評価できる場合は損害賠償が認められる。

本件では、正社員のトラック運転手は広域異動や等級役職制度を通じて会社の中核人材として登用される可能性がある一方、契約社員はいずれもない。

 

【手当の不合理性】

転居を伴う配転がある正社員は、住宅費用が多額となり得る。住宅手当の差は不合理ではない。皆勤手当は運転手を一定数確保する必要から皆勤を奨励する趣旨であり、職務内容によって両者の間に差は生じない。契約社員に支給しないのは不合理。

二審判決が認定した通り、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当の相違も不合理。

 

 

★長澤運輸事件

 

【判断基準】

再雇用された嘱託乗務員と正社員は、職務内容と配置の変更の範囲が同じだが、賃金に関する労働条件はこれだけでは定まらない。経営判断の観点からさまざまな事情を考慮でき、労使自治に委ねられる部分も大きい。

定年制は賃金コストを一定限度に抑制する制度。正社員は定年までの長期雇用が前提だ。再雇用者は定年まで正社員の賃金を支給され、老齢厚生年金も予定されている。こうしたことは、不合理かの判断の際に考慮する点として20条が挙げる「その他の事情」となる。

賃金項目が複数ある場合、項目ごとに趣旨は異なる。不合理かどうかは趣旨を個別に考慮する。

 

【能率給・職務給】

正社員に支給される基本給、能率給、職務給は、嘱託乗務員の基本賃金、歩合給に対応している。会社は職務給がない代わりに、基本賃金額を定年時の基本給の水準以上とし、収入の安定に配慮。歩合給で労務の成果が賃金に反映されやすくなるよう工夫もしている。

正社員より合計額は少ないが、原告3人は正社員より2~12%少ない程度。老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始まで2万円の調整金も支給される。総合考慮すると、労働条件の相違は不合理とは言えない。

 

【手当の不合理性】

精勤手当は欠かさぬ出勤を奨励する趣旨。嘱託乗務員と正社員の職務内容が同一である以上、皆勤を奨励する必要性に相違はなく、不合理だ。

住宅手当と家族手当は福利厚生や生活保障の趣旨。嘱託乗務員と違い、正社員は幅広い世代が存在し、生活費の補助に相応の理由がある。役付手当は正社員から指定された役付者に支給する。いずれも不合理ではない。

正社員の超勤手当を計算する基礎に精勤手当が含まれる。嘱託乗務員の時間外手当には含まれておらず、不合理。

賞与は多様な趣旨を含み得る。嘱託乗務員は老齢厚生年金や調整金が予定され、年収も定年前の79%程度と想定。不合理ではない。

不合理な相違について、会社は損害賠償責任を負う。

 

 

まだ判決の詳細を確認していないが、それを承知の上で、両事件について最小公倍数的視点から簡単にまとめてみよう。

・不合理かは手当ごと個別に判断する

・再雇用は労契法20条「その他事情」として考慮される

・住宅手当に差を設けることは不合理でない

・職務内容が同一の場合、皆勤手当に差を設けることは不合理

・通勤手当に差を設けることは不合理 など

 

 

ここからは所感。

再雇用後の賃金を下げる企業は多く、今回の判決の内容に安堵する企業も多いかと思う。

ただ、判決で指摘されているように程度問題でもあろう。これが例えば40%下げた場合は、果たしてどうなるのだろうか?また、老齢厚生年金も今後、支給開始年齢がどんどん引上がっていくため、そのあたりも企業としては考慮すべきなのかも。

 

住宅手当についてはいろいろ意見がありそうだが、ハマキョウレックス事件は、例えば住宅ローンを抱えた社員が、単身赴任することにより二重に住宅費用がかかる、といったことを想定しているのであれば理解できなくもない。

一方、長澤運輸事件は「正社員は幅広い世代が存在し、生活費の補助に相応の理由がある」って…ちょっと何言ってるか分からない(笑)

 

皆勤手当は、反対解釈すると職務内容が異なれば異なる扱いをしてもOKということか。

通勤手当は、予想できたしその通りなんだろう。

 

 

今年最も注目すべき労働判決が同日になされたのは、果たして偶然なのか意図的なのかよく分からないけれど、これで1つの区切りがついたと言える。

今後、当該判決に対する専門家の評価や分析がいろいろ出てくるだろうし、政府はガイドラインの策定や法整備に向け動き出すものと思われる。

自社の賃金制度や人事制度の見直しを迫られる企業もあるだろう。トラブルや訴訟も増えるかもしれない。

またそもそも論として、(以前当ブログで書いたけど)同一労働同一賃金は、”社員区分”そのものの見直しから検討することが重要だと思う。

 

そういったことを鑑みながら、クライアントに最適提案していくのが自分に与えられたミッションになる。


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