残念ながら、せっかく作成した就業規則を上手に活用できている企業は少ない。
「どんな場合にどんな懲戒処分ができますか?」「休職はいつまで与えればよいですか?」など、そんな質問が来ると、「いやいや、まずはせっかく作った就業規則を見ようよ」とつい思ってしまう。
とは言えそんな時は、「御社の就業規則第○○条第○○項の定めによれば…となります」と丁寧に説明する。
社員への周知も、ちゃんとできている企業は少ない。
周知していない場合のリスクを説明した上で、社員を採用したとき、就業規則を作成・変更したとき、社員研修のとき、それぞれの場面において周知し、「就業規則閲覧表」にサインをもらうようアドバイスしている。
これらを根気よく続けていると、少しずつ就業規則を意識するようになり、就業規則に慣れてくる。
先日、あるクライアントの社長の話。
入社前の1日職場体験で来たエントリー者が、実は会社方針にそぐわないことが判明。社長はその日のうちに就業規則の服務規律規定を本人に見せ、説明し、そのエントリー者を採用するに至らなかったという。
この会社は、採用時には社員へ就業規則を周知し、サインをもらっていた。それが習慣化されていた。だから社長の脳裏には、すぐに就業規則が思い浮かんだのだ。これこそ活きた就業規則というもの。
更に就業規則を介して説明することは、単に会社ルールを伝えるだけに留まらず、話に客観性が担保され、相手を納得させる効果が生まれる。(何もない状態で、単に口頭だけで説明することを考えてみて欲しい。その違いは一目瞭然だ)
僕らは仕事柄、就業規則は見慣れたものだが、企業にとっては小難しく不慣れなもの。そこをまずはよ~く心得るべし。
だから、就業規則は作って渡してハイ終わりではなく、そこからいかに慣れてもらうか。単なる紙屑となるのか、或いは活きたルールブックになるのかはそこにかかっている。