前回も記したように、色々な労使トラブル相談を受けている。
そこで改めて思うのが、行政の限界だ。
例えば、社員が降給を不満に労基署へ飛び込んだ例では、それが不利益変更か否かは労基はジャッジしない。というかできない。それは労働契約法の範疇の話だからだ。
では何をジャッジするのかと言うと、賃金未払いかどうか。これは労基法に基づく。
結果、減給額の根拠である賃金規程を見せ説明した。今後、労基から当該社員へその旨説明することになるが、それでも本人が不服と思うなら、後はもう司法の場で争うことになる。労基はこれ以上タッチできない。民事不介入というやつ。
解雇もそう。
解雇が有効なのか否かは労基はジャッジできない。それも労働契約法の話であり、ジャッジは司法の場でしかできない。
では労基は何をジャッジするのかと言うと、解雇予告や解雇予告手当が適切に行われたかどうか。やはり労基法に基づく。
労災もそう。
例え労基が労災請求を認めなくても、司法の場で安全配慮義務違反で企業が負けることはあり得る。
同一労働同一賃金はちょっと異なる。
確かに法律根拠はパート有期法にあるので、労基が扱えることになっているが、不合理な待遇差か否かのジャッジは容易でない。以前当ブログでも紹介したが、実態は労基がジャッジできるのは、原則通勤手当と慶弔休暇くらいだ。多くは司法の場でジャッジされる。
そのような意味では、同一同一は少し変わっていると言えるだろう。労基にとっては、取りたくてもなかなか取れない、まるでのどに刺さった魚の小骨のような感じだろうか。
普段の業務では、我々社労士はどうしても行政に寄った考え方をしがちだが、相談内容によっては司法との違い(行政の限界)について、法律根拠と共に理解しておかないと、クライアントへ適切なアドバイスができない。
ここが少しずつ分かってくると、社労士として一皮むけた感じになってくる。