先日、あるクライアントから社員を解雇したい旨の相談があった。
聞く限り解雇の有効性に不安を感じつつ、一応、要件事実(合理的理由や社会通念上の相当性)や手続き、注意点について一通り説明した。
その後、1週間ほどして再度連絡が来たのだが、トラブルになっているという。聞けば、直属の上司が本人へ解雇通知したのだが、その際、解雇理由を尋ねられた上司は、なんと「詳しいことは分からない」と答えたそうだ。本部からその上司へ、肝心な解雇理由が伝わっていなかったようで、そりゃトラブルわな。
僕はこの件を聞いた後、思わずミルグラム実験(別名「服従実験」)を思い出した。
それは、1960年代にスタンレー・ミルグラムが「権威への服従」を検証した社会心理学の実験。参加者は「教師役」として、「学習者役」が誤答するごとにショックの電圧を上げるよう指示された。
実際にはショックは流れておらず、学習者役は協力者だったが、参加者には知らされていない。権威ある実験者からの指示を受け続けるなかで、参加者の多くは他者に苦痛を与えていると信じながらも、表示上の最高電圧(450V)まで操作を続けた。
この実験により、人は「指示を出しているのは権威者だから、結果の責任は自分ではなく権威者にある」と感じやすくなることが証明された。第二次世界大戦中のナチスドイツによるホロコースト(大量虐殺)を主導したアイヒマンは、実は一般の人だったという。そして法廷で「自分はただ命令に従っただけ」と主張したという。
アイヒマンのように、社員が思考停止になる組織は危険極まりない。
