Vol.64 組織のワナ~コロナ対応にみる「空気の支配」
新型コロナウイルスの感染拡大ですが、特にクルーズ船に対する政府がとった一連の対応
・初動は、「楽観主義の後手後手」と感じた方も多かったのではないでしょうか。
私は仕事柄か、こういったクライシス発生時におけるリーダーシップや人間の行動心理と
いったものに、つい興味がいってしまいます。
そこで、久しぶりに名著「失敗の本質」を読み返してみました。
この本では、大東亜戦争における日本軍の組織的な失敗を分析・研究しています。その考
察は、日本の組織に教訓になることが多く、非常に参考になります。
その中で、組織における「空気の支配」について、次のようなことが書かれています。
・本来適切に行われるべき議論を、リーダーの個人的意向(一点の正論のみ)で、問題全
体に疑問を持たせず結論を押し切ってしまう
・都合の悪い情報や正しい警告を封殺・無視し、希望的観測に心理的に依存していく
・サンクコストを惜しむあまり、失敗の過程で無謀を指摘されても「ここまできたら、や
めれば損」という心理バイアスから抜け出せない
・集団の空気や関係性を重視するあまり、安全性や採算性よりも、関係者への個人的配慮
を優先する
・コンティンジェンシープラン(万一を想定した計画)のない状態は、損害を劇的に増や
し、新たな損害を自ら生み出す
もちろん、新型コロナの出現は人類にとって「未知との遭遇」であり、それへの対応は、
何が正解で何が不正解かは神のみぞ知るといったところなのでしょうが、人はいったん組
織に入ると、多くが「空気の支配」にやられてしまうのかもしれません。
皆さんはどう思いますか?
Vol.63 求人のポイント①~ハローワークも検索ワードがカギに!
ご存じかと思いますが、ハローワークの求人検索システム(ハローワークインターネット
サービス)が今年から刷新されました。
ようやくハローワークもネットにつながったことで、一定の手続きを行えば、会社にいな
がら求人の申込や変更が可能となり、求職者(やそれ以外の人)も家にいながらスマホや
パソコンから求人検索できるようになりました。
そこで今回は、求人のポイントということで、ハローワークの新システムをいろいろ検証
してみたいと思います。
ネットにつながったことで、今後、希望する条件を入力し仕事や会社を検索する求職者が
増えることは必至でしょう。(ちなみにハローワークでは、求職者はマウスやキーボード
を操作し検索するように変わりました。要はパソコンと同じです)
これからの求人は、いかに求職者の「検索ワード」にひっかかる求人にするか、が大きな
ポイントになります。
そこで、試しに検索ワード別にどれくらいの求人がヒットするか検証してみました。(条
件は「就業場所:静岡市内」「フリーワード:下記検索ワード」の2つ。カッコ内の数字
は「就業場所:全国」とした求人数。2月9日時点)
「休日が多い」 0(37)
「完全週休二日」 4(681)
「年間休日120日以上」 1(181)
「有休取得率80%以上」 0(9)
「給与が高い」 0(2)
「月収30万円以上」 0(56)
「賞与あり」 84(7143)
「退職金あり」 0(384)
「入社祝い金」 54(3899)
「残業なし」 9(1199)
「平日のみ」 10(2957)
「1日4時間以内」 0(13)
「扶養の範囲内」 4(2107)
「離職率5%以下」 0(1)
「離職率低い」 0(1)
「職場見学OK」 2(264)
「転勤なし」 37(2721)
「人間関係良好」 0(42)
「アットホームな職場」 6(1681)
「子育てしやすい」 0(69)
「履歴書不要」 39(6722)
※静岡市内求人全5156
正直、これだけ最小限の条件で検索してみても、あまりヒットしなかったのは予想外でし
た。
更に、これに職種や社員区分、雇用形態等、細かく条件設定が加われば、上記ヒット数は
もっと減るということになります。
今回検証してみて、気づいた点をまとめてみると、
・まだまだ検索ワードを意識した求人になっていない(検索ワードが抜けている)
・検索ワードを意識した求人にすれば、ヒットする同業他社が少ない分、求職者の目に留
まりやすい
・自社ホームページへリンクが貼れるため、ますます採用を意識したホームページが重要
になる
・リンク先URLは、自社ホームページのトップページでなく求人ページにする
・全国の求職者をターゲットにできる(求職者が就業場所を特定しなければ)
求人のポイントは、いかに求職者目線に立って自社の求人票を俯瞰して見ることができる
かです。ネットにつながったことで、それがより可能になったということです。
今回のまとめです。
・求職者の検索ワードにひっかかる求人内容にする。
・検索にヒットする同業他社が少ない分、求職者の目に留まりやすくなり有利になる。
・求職者目線で自社の求人を俯瞰することで、いろいろな気づき(検索ワードを工夫する、
リンク先を求人ページにする等)が見えてくる。
Vol.62 表彰制度で社員の動機付けを促す
昨年末、毎年呼んでいただいているクライアントの忘年会に参加しました。
その中で、初の試みとして社員表彰がありました。賞は「ありがとう賞」。1年を振り返
り、最もありがとうと伝えたい人を表彰するというもので、受賞者は事前の社員アンケー
トで決定しました(集められたアンケートは「ありがとうカード」として後日各自に配布)。
各部署のリーダーが直接本人へ感謝の言葉を伝えたのですが、少し恥ずかしそうでしたが、
皆さんとてもいい笑顔でした。
更に「特別賞」として、自転車で横転し骨折した女性を救助したということで、外国人技
能実習生の方3名が表彰されました。とても良い内容だったと思います。
そこで今回は、動機付けに効果的な表彰制度について取り上げます。
誰でも「人から認められたい」という「承認欲求」をもっています。
承認欲求を満たす行為(褒めたり認めたりする行為)は、動機付けとして効果があります。
承認行為自体は外発的なものですが、それが内発的動機づけに変わることもあるので、や
はり承認行為は重要です。(例えば、上司の部下への承認行為により、部下が「もっと認
められるよう努力しよう!」と自らやる気になったりする)
表彰制度は、言わば「公の承認」行為ですので、その効果は更に期待できます。
表彰制度のポイントは、
・表彰内容は具体的に伝える。(ただ単に「仕事を良く頑張った」では効果は薄い)
・なるべく多くの社員の前で表彰する。
・感謝の言葉を伝える。
・見返りは期待しない。(「これからも期待しているよ」とは言わない)
・選考プロセスを透明にする。
・副賞は賞状など形に残るものがよい。(ずっと家族に自慢できる)
・お金を渡す場合は寸志で十分。(お金によるモチベーションの維持は短期)
・外部社員(取引先や下請け、派遣社員等)も表彰対象にする。
一方、社員表彰をすると必ずと言っていいほど「ねたむ人」が出てきます。
対策としては、前述のように全社員の投票で決定する、誰もが納得するような具体的な表
彰内容を伝える等が考えられます。
承認欲求同様、ねたみは誰しも多かれ少なかれもっていますので仕方ありませんが、その
ような人を気にし過ぎて、表彰できる機会を活かさないのは実にもったいないことです。
今回のまとめです。
・誰しももっている承認欲求を満たす承認行為は、動機付けになりうる。
・社員表彰は公の承認行為であり、より大きな効果が期待できる。
・表彰内容は具体的に伝えること。お金を渡す場合は寸志でよく、副賞として形に残るも
のを贈ると効果的。
Vol.61 リーダーとして押さえておきたいモチベーション理論②~原因帰属と達成動機の低い人のモチベーションの上げ方
部下が仕事において何か成果を出したときや失敗したとき、皆さんは上司として、どのよ
うなことに留意して部下に声をかけていますか?(或いは放っておく?)
人が成功した場合や失敗した場合に、その原因を何に求めるか、その思考プロセスを原因
帰属といいます。
社会心理学者ワイナーは、原因帰属の要因を「内的要因」と「外的要因」の2つに分け、
さらに内的要因を「固定的」(能力など:すぐには変わらないもの)と「変動的」(努力
など:自分次第で変わるもの)の2に分け実験を行いました。
実験から、次のようなことが明らかになりました。
・達成動機の高い人は、成功を「能力や努力」といった内的要因のせいにするが、失敗に
ついては「努力(不足)」のような変動的な内的要因のせいにする傾向がある。
・達成動機の低い人は、成功場面においても失敗場面においても変動的な内的要因(努力
など)のせいにすることが少なかった。
・成功したときは固定的(能力)でも変動的(努力)でもよいので内的要因のせいにし、
失敗したときは変動的な内的要因(努力)のせいにするといった原因帰属のスタイルが、
モチベーションの高さにつながる。
失敗したとき、「自分は努力不足だったのだから、今後は努力しよう」と受け止めれば、
モチベーションは維持できますが、「自分は能力がないからダメだったんだ」と受け止め
れば、能力というのはすぐには向上しないため、「どうせダメだ」「どうせムダだ」とい
った気持ちになりモチベーションは下がりやすくなるということです。
では、どうやったら達成動機の低い部下や心が折れやすい部下に、達成動機の高い人のよ
うな考え方を身につけさせるかということになりますが、これは、原因帰属の仕方を変え
ること、すなわち努力のせいにする認知の仕方を叩き込むことです。
例えば、何か成果を上げた場合、能力ではなく努力したことに対してウエイトをおいて褒
めることです。
何か失敗した場合も、能力ではなく努力不足であったことに対して声かけや指導をするこ
とです。
今回のまとめです。
・達成動機の高い人は、成功は内的要因(能力や努力)、失敗は内的要因(努力)と考え
る傾向があり、達成動機の低い人は、成功も失敗も内的要因(努力)と考える人は少ない。
・成功したときは内的要因のせいにし、失敗したときは変動的な内的要因のせいにすると
いった原因帰属のスタイルが、モチベーションの高さにつながる。
・達成動機の低い人には、(すぐには向しない)能力でなく努力に対してウエイトをおいて
声かけや指導をする。