嫌な取引先は切ってよい

ユニークな本のご紹介です。

所詮、世の中好き嫌いです。
所詮、世の中好き嫌いです。

まずタイトルがいいですね(笑)

 

この本は、社員20名強の下請けの町工場ながら、非常識経営でメディアでも数多く取り上げられている中里スプリング社代表、中里良一氏の経営哲学が詰まった本です。

 

同社には30年以上前から「嫌な取引先を打ち切る制度」があり、これまで49社に適用してきました。

 

打ち切る権利を与えられるのは、その年に1番頑張ったと社長が評価した社員。

ただし1社打ち切る度に、社長自ら全国を飛び回り、3ヵ月以内に10社の新規開拓をするというからかなりのやり手社長です。

 

この制度を作った背景には、社長のこんな思いがありました。

・心から自分が好きだといえる仕事に打ち込んだ方が良い結果を出せる

・日本一楽しい会社にしたい

・下請けであっても、気持ちが貧しくなるような仕事はしない

 

 

確かに、好きな仕事を好きな人とやるのが1番いいに決まってます。

いくら仕事だからと言って、人を見下したり横柄な態度の相手やいい加減な相手とは誰だって仕事などしたくありません。お互いの信頼関係を感じながら、気持ちよくやりたいはずです。

 

我々は仕事をする上で理性を重視しがちですが、ともすればそれは自分を押し殺し苦しめるだけです。

もっともっと、自分の心に素直になってよいのかもしれません。所詮、世の中は好き嫌い(合う合わない)で成り立っていますもんね。

 

 

さて、同社長の経営哲学・手法をいくつかご紹介します。

製造業以外の中小企業でも、経営や人材育成に大いにヒントになるかと思います。

・担当するお客様や自分の上司、部下は好き嫌いで決められる。

・経営者が幸せにできる人数がその企業の適正規模。だから会社は無理やり大きくしない。

・下請けはリスク分散が大切。1業種あたりの売上は全体の1割以内、1社あたりの売上は全体の5%以内にしている。

・効率化や合理化を叫ぶ会社は社員をコストと考えるようになり、行きつく先は「リストラ」。たくさんの無駄が人の感性を豊かにする。だから無駄を大切にするし、リストラはしない。

・社員研修は経営者がやるべきこと。外注に出すことはありえない。

・製造業が増収増益を目指すことは、会社を弱体化させる危険性がある。来年1年間、会社が存続できるお金を稼ぐというのが基本的な考え。

・「嫌いな取引先を打ち切る権利」「好きなものを作れる権利」は1年間で1番頑張った人に与える。その基準は毎回変わる。あらかじめ評価基準が決まっていると、要領よく働く社員が出てくるだけ。

・経営者は、社員に何でも平均点以上を取らせようとするのではなく、11人の良いところを見つけ、そこで100点満点を取るような社員教育をすべき。それがその人の価値であり、それが収入の源泉となる。

・前社の経験は活かされても困る。だから経験者は採用しない。

・障害者は1人必ず採用する。地域にハンデのある人が20人いれば、20社がそれぞれ1人ずつ雇えばよい。

・1ヵ月に1度「好きな社員ベスト10」を掲示する。基準は都度変わる。

・課長以上の管理職は社長の好き嫌いで、係長以下は立候補制で決める。1年後に自己評価しダメなら平社員に戻るが、再チャレンジできる。

・社員は1年に1度、自己評価する。6つの「人ザイ」(人災・人罪・人在・人済・人材・人財)のうちどれかを選ぶ。

・月に1回、お互いの夢を語り合う「夢会議」を実施している。…など。

 

 

中小企業の経営者というのは、得てして(良い悪いは別として)ワンマンでしょうが、中里社長は単にわがままで気分屋のワンマン社長とは一線を画しています。人の心理をよくついた上で、社員のことをちゃんと考えています。

私が特に感心したのは「評価基準を予め決めない(毎回変える)」こと。一般論とは逆の発想ですが、これはこれで一理あります。

 

同社長は言います。「仕事は自由に楽しみ、経営は心理学をもって感性を大切にして行うべきだ。」と。

これって実はとても大切なことですよね。人は理性より感性が先に立ちますから。

 

 

そういえば、非常識経営といえば?「未来工業」の創設者山田昭男氏ですが、同氏は「日本人には儒教の精神がある」とし、その日本人独特の精神・心理をついた経営手法を取り入れています。

理性よりも感性や直感を大切にするところは、中里社長と共通するのではないでしょうか。

 

 

さて、嫌な取引先を切る制度。当所も取り入れてみようかな…(笑)

 

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