弁護士×社労士 最新!労務管理セミナー~精神疾患と労働関連法改正への企業実務対応

先日、弁護士共催で最新労務管理セミナーを開催した。

第1部の栗田弁護士。
第1部の栗田弁護士。

第一部は栗田勇弁護士による「精神疾患への企業実務対応」。

昨今の重要な判例を元に、企業が取るべき対応を具体的に解説していただいた。

 

その中で何度も連呼されていたのが「エビデンス(証拠)を残す」ということ。

いざ裁判になった場合、それがあるか否かで勝敗が決まると言っても過言ではない。

そのためには、メンタル不調者とのやりとりを面倒でも都度書面に残しておくことが大切。

 

採用時のメンタル不調確認には、アンケートなどが1つの手段として考えられるが、強制すると不法行為となる可能性があるため注意が必要。

 

もし職場にメンタル不調らしき従業員がいた場合、(最近の東芝事件でも示されたように)「本人からの申告がなくても」企業は何らかの配慮・対応が必要だ。いわゆる安全配慮義務ってやつね。何もしないのが1番まずい。

 

休職や復職もやはり書面にて都度運用することが重要で、また主治医だけの診断書だけで判断するのは危険。

やっかいなのは、復職させず退職させた後に労災認定が下りるケース。その場合は労基法第19条により解雇制限にかかり、遡って解雇無効となる。

退職時において、労災認定の可否の予測がつかないためある意味仕方がないのだが、とにかく企業としては、適宜必要な措置・対応を地道に積み重ねていくほかない。

 

第2部。
第2部。

第二部は「労働関連法改正への企業実務対応」と題して僕が担当。

 

まずパートタイム労働法。

来年4月に「正社員と同視されるパート」の要件が企業にとって厳しくなる。

中核的業務や責任、配転などが正社員と同じであれば、待遇差別が禁止になる。

 

そして注目すべきは、最近この「待遇格差訴訟」が実際に起こり始めたということ。

「ニヤクコーポレーション事件」は、パートタイム労働法を根拠に訴えた珍しい事件ですが、被告に一部賃金格差の支払いが命じられた。

 

「メトロコマース事件」「日本郵政事件」は、契約社員が正社員との賃金格差は労働契約法第20条(契約期間があることをもって、無期労働契約より不合理に労働条件を相違させることを禁止)違反だとして提訴した事件。

特に民事的効力のある労働契約法は、労働者にとって「強い武器」になる。とうとう来たか!って感じ。

まだ判決は出ていませんが要注目だ。結果いかんよっては他方へ大きく影響する可能性がある。いずれにせよ、今後この手の訴訟は確実に増えるだろう。

ちなみに、パートタイム労働法と労働契約法は近年足並みを揃えてきている。

 

また、昨年4月以降から開始された契約期間が通算5年を超えると発生する「無期転換申込み権」にも要注意。

「一定の病気等の確認書」と「就業規則」のサンプル資料♪
「一定の病気等の確認書」と「就業規則」のサンプル資料♪

続いて「自動車運転死傷処罰法」。マニアック(笑)でも大事。

 

「てんかんや総合失調症、低血糖症等の意識障害」をもつ人が、車で人身事故を起こした場合に危険運転致死傷罪が科せられることになったのですが、もし企業にこれらの病気に該当する従業員がいて、もし人身事故を起こしてしまったら…

 

法的には、企業に使用者責任と運行供用者責任が発生する。しかも使用者責任の範囲は広い。さらには社会的責任による企業活動への影響も無視できないところ。

更に最近、厚労省からこれら症状の有無を企業は確認した方が望ましい旨の通達が出たところだ。

そこで、(特に業務で車を使う人やマイカー通勤者に対して)選考時などで書面にてそれらの確認をすることが重要となってくる。

更に「運転記録証明書」を選考時の提出書類にすることで、事故や違反歴の多い者をエントリーさせなくする工夫も効果的。

これを機に、就業規則(車両管理規程)を見直すことも必要だろう。

 

 

続いて「派遣法(案)」。まさに今、臨時国会で再審議が始まるところ。

まず専門26業務が廃止に。複雑な現行ルールは現場をただ混乱させるだけですから、個人的には賛成。

 

そして派遣可能期間として「個人(組織)3年」「派遣先事業所3年」の2つが適用に。

前者は、派遣先は同一の業務であっても3年ごと派遣労働者を代えさえすれば、ずっと派遣労働者を受け入れ続けることが可能になる。後者は実際問題として歯止めの機能をもたないだろう。

これらだけで考えれば、派遣先にとっては使いやすい改正になりそうだ。

 

ただし!一方で派遣会社の負担が大きくなる。

特定が廃止になり一般に一本化され、派遣労働者のキャリアップの推進や派遣期間が3年に達し希望する派遣社員への雇用安定措置が義務化される。

さらに労働契約法の関係で、派遣労働者に「無期転換申込み権」が発生。

となると、意図的に派遣社員の雇用期間を短く設定することも考えらる。そうなると派遣先への影響も…

来年4月からの施行予定だが、ホント、いつになっても派遣法は悩ましい。

 

 

最後に障害者雇用促進法(納付金の対象企業拡大)や厚生年金法(パートへの社保適用拡大)、安衛法(ストレスチェック義務化)、雇用機会均等法(間接差別の適用拡大)などを解説。

 

人材不足が顕在化し、働き方が多様化する中で企業が生き残っていくためには、「どんな人材をどのように確保しどのように活用していくか」は重要課題だ。

その課題を考える上で、或いは複雑・多様化する労使トラブルを防止する上でも、法律や判例を理解していないとお話にならない。但し昨今の法律は改正が多く複雑。

そこで、常に最新の情報を提供し提案してくれる”良きブレーン”となるべき専門家を見つけ出し、先手先手の対策をとっていくことが企業にとって非常に重要になる。(当所は随時、最新の情報をメルマガ等でご提供し、ご提案している)

 

 

ご参加いただきました皆様、業務終了後にもかかわらず長時間ありがとうございました。是非とも実務でお役立て下さい!

※アンケート結果やセミナー後の参加者からのご意見、また私自身の感想も含めかなり内容の濃い充実したセミナー(過去に当所が開催したセミナーの中でも指折りのセミナー)になったと自負しています^^


アンケート結果(一部抜粋)

 

初めてセミナーに参加させて頂きましたが、大変勉強になりました。自分の勉強不足がよく分かり、今後の課題が見えました。(小売業/O様)

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法改正の話を実際聴いて理解が深まりました。(自営業/Y様)

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重要事項が良く理解できた。本来なら総務部門の担当に聴いてもらいたかったが、またの機会に連れてきたい。(製造業/T様)

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難しい話だったが、企業としてはその都度確認して知っておくべき内容だと実感した。大変勉強になりました。ありがとうございました。(建設業/S様)

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有意義なセミナーに参加させていただきましてありがとうございました。非常に分かりやすく、ためになる内容でした。また栗田先生とのコラボ、期待しています。(製造業/M様)

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聞くこと全てが新しいことばかりで(断片的に知っていることはあっても)、大変勉強になります。(就業規則等の)資料サンプルも助かります。(小売業/U様)

 

栗田先生の講義はユーモアも交えて非常に聴きやすかったです。トモノさんのお話も更に詳しく聞いて今後の仕事に活用していきたいです。(製造業/T様)

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知らないことばかりだから、全てためになりました。(保険業/S様)



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