ヨシムラ視察報告

先日、焼津市にある株式会社ヨシムラ様へ視察に伺った。

経営理念「私たちはパッケージを通してキラリと光る未来を創ります」とあるように、同社は主にお茶関連商品の包装資材を製造している。社員数は230名強で、全国各地に営業所がある。

 

理念経営を徹底していて、今年「日本で一番大切にしたい会社大賞」に選ばれた。

以前から視察を希望していたが、ようやく日程が合った。

 

最初は座学から。

 

同社は、付加価値商品で決して安売りしない、下請けにならない、ということにこだわっている。これは中小企業が生き残る術であり、社長が尊敬している坂本光司先生の教えどおりだ。

 

今ではマーケティングやブランディング、デザイン、買い場づくり支援まで手広く行っている。

3年くらい前から、理念を自分の言葉で言えるよう、また自分の仕事に置き換えられるよう、理念経営に取り組んでいる。

 

各部署や各課の理念だけでなく、商品キャラクターまでにも理念がある。

 

 

理念と現実のギャップを捉え、それを埋めるためのPDCAを回している。

 

社員は自分ごととして理念を考えるようになり、それが話し合い・コミュニケーションにつながっている。

同社は「目標の視点」として①お客 ②業務 ③育成成長 ④財務の順で重視している。

 

ちなみに同社は普段から、事あるごとに「キッチンタイマー」で時間厳守で行動している。

今回も司会者が「○○さん、あと2分です」といった感じで時間を図りつつ、講師が話をするというスタイル。

続いて社内視察。社長じきじきに案内していただいた。とにかく明るく元気で可愛らしく、ゆるキャラみたいな人(笑)

 

新入社員研修は2ヵ月間。いろんな部署をローテーションする。講師は専ら社員が行う。研修最後には、卒業制作をするそうだ。

 

新卒採用は、リクナビやらマイナビなどは使わない。学生はどうしても「猫を被る」ため本音が分かりづらく、過去に内定辞退が続出した苦い経験をしたからだ。それ以来、実際に会社に来てもらい、会社を知ってもらった上で採用につなげている。ちなみに初任給は高卒でも四大卒でも17万円だ。

「週報」には、感謝の言葉を社長が週報にまとめている。今では、載せきれないほどたくさんの感謝の言葉が集まるそうだ。

 

「誉めて」人を伸ばすということが、あまりしっくりこなく、あくまでも「感謝」することが大切だという。…ん~深い。

多能工を推奨している。

誰がどの仕事を習得したか、グラフで一目瞭然になっている。

 

当時、男性ばかりの職場にある女性社員が加入し、今ではリーダーになるくらいに育っているという。

ダイバーシティは、考えるよりやってみる・やらせてみるということが大切だと感じたという。

年に1回の経営計画の発表会。

社員一人ひとりが目標を発表、それに対して他の社員がいろいろ「もの申す」という。

そこで皆の承認が得られれば、晴れてその目標は採用される。そういった過程を経ると、一人だけの目標ではなく、全社員の目標として認識・共有化されるという。なるほど。

 

「イチオシ投票」では、社員の名前を投票し、選ばれた社員が表彰される仕組み。

1人では足りないので、2名まで投票していいルールになったとか。

毎年CS調査とES調査を行っているという。

毎回思わぬ点を指摘され、「有頂天になるなということ」と意識がリセットされるという。

「マル秘ノート」には、ヨシムラの経営や人材育成の指針、目標などがぎっしり記載されている。

「レジェンドリスト」とは、何か仕事で大きな失敗が起きたとき、それをレジェンドとして後世まで活かしましょ、というもの。

 

「そのまんまホーチミン事件」「アルミじゃないよ、和紙ですよ事件」などレジェンドごとにネーミングを工夫している。ネーミングも極めて重要だそうだ。

仕事は遊び心も大切。

生産部長の植田さんが提唱し、社内に広まった売上げを簡単に把握するための「植田方程式」。

 

端的に言えば、例えば1万円の利益を損失した場合は、1万円÷3%(利益率)=約33万円(33倍)の売り上げを損失したこととなる。

植田方程式は、社員の数字に対する意識付けを図っているという。ここでもネーミングにこだわりが。

「ノーベル起案」は、誰でも提案できる制度。

1回起案するごとに500円もらえる。確か未来工業もこの手法でやっていた。

 

社長「私が起案しても採用されないこともあります(笑)」

さまざまな商品がディスプレイされている部屋には、輝かしい受賞歴を示すトロフィーや賞状が飾られている。

印刷技術も素晴らしく、世界デジタル印刷コンテストで何度も表彰されるほど。 

製造現場では、1人1人の各スキルレベルを相撲の番付で可視化していて、人材育成に役立てている。

面白い。

ファインプレイのみならず、ヒューマンエラーについても全て包み隠さずオープンにし、可視化している。情報を共有化することで、全員の知識やスキルにしている。

驚くべきことに、毎日朝礼で自らのファインプレイやエラーを皆に伝えているそうだ。

包み隠さず言える職場風土が素晴らしい。

 

可視化は経営の基本だと思う。

創業85周年を記念し、全社員の笑顔の社員で作った「85」。素敵です。

社内視察が終わると、参加者はグループに分かれて、短時間で生産性と成果が上がる「5分会議」の実体験。

 

グループは6名がマックス。一人がリーダーになり、テーマにそって一人ひとり順番に思いつくまま意見を言ってもらう。「パス」も認められる(笑)まぁブレストだな。

メモを取ることはせず、一人が書記になり、出た意見を模造紙に「ひらがな」で速記していく。とにかく時間重視でタイムを計りながらやる。

当グループの5分会議議事録(笑)
当グループの5分会議議事録(笑)

同社では、部署間をまたいで誰でも気兼ねなく意見が言え、短時間で済む5分会議は、タイムマネジメント・書くこと・コミュニケーションが図れ、一番の教育と位置付けている。

 

会議は、アジェンダ、目的・目標、振り返りを重視している。ちなみに、目的は「~のために」、目標は「~をする」といった具合に表記する。

書き出した模造紙を写メし、それが議事録になる。

5分会議が終了すると、次にグループごと本日の視察で疑問に思ったことを発表。

その疑問に対して、社長はじめ各部門トップの方々が回答。皆さん、包み隠さず何でも気兼ねなく答えてくれた。ここでも社員の方々の仲の良さが垣間見えた。ちなみに同社では役職はつけず、例え社長に対しても「○○さん」と呼ぶ。

 

離職率は1.9%で、会社の方針で絶対に解雇はしないそうだ。6等級制で評価は年2回のポイント制。決算賞与は経常の25%を現金で分配する。

社員を変えることは難しいので、仕組みを変えることが大切とのこと。

 

最後に「先代社長と何が一番違いますか?」との質問に、社長は「先代は孤独だったが、私は仲間がいるから孤独ではない。」と答えたことが、この会社を言い表していると感じた。

ありがとうございました!
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