Vol.10 部下のことをどれくらい知っていますか?~個別面談のすゝめ
時々、経営者や上司の方から「従業員が定着しない」「人間関係が良くない」「情報が共
有されていない」といった話を耳にします。
そのような部下や組織に関する悩みの原因には、おおよそ「コミュニケーション不足」が
絡んでいます。
そこで今回は、職場におけるコミュニケーションについて取り上げます。
さて、突然ですがここで質問です。皆さんは、社員や部下のことをどれくらい知っていま
すか?
表面的なことではなく、例えば、仕事や職場において今どんな悩みや目標をもっているの
か、将来どんなキャリアを描きたいと考えているのか、どんな場合にモチベーションが上
がるのか・下がるのか等、内面的なことについてです。
すぐに答えられた人は、部下や職場についての悩みが少ないかもしれません。残念ながら
答えられなかった人は、そのような悩みが尽きないかもしれません。
話を戻しますが、職場のコミュニケーションには、実は2種類あります。
①フランクなコミュニケーション
普段の挨拶や何気ない会話、飲みニケーションなど
②オフィシャルなコミュニケーション
仕事や職場、キャリア、会社のこと等について、じっくりと本気・本音で対話すること
職場のコミュニケーションと言うと、多くの人が①だけを意識しがちですが、実は②も非
常に大切です。
では、どうしたら②を効果的に実践できるのでしょうか。
その最たる方法が「個別面談」です。ポイントを簡単にまとめてみます。
・予定を組んで、計画的に優先事項として行う
(思いつきでやったり、上司の都合で日程をコロコロ変えない)
・定期的に行う(可能なら月1回、少なくとも3月に1回ほど)
・面談内容は、仕事や職場に関すること、目標やキャリアに関すること、或いはプライベ
ートに関すること(会社に知っておいてもらいたいこと)等
・上司はあくまでも「傾聴」し、アドバイス・支援するという真摯な姿勢が大切。信賞必
罰も忘れず
・目標設定やフィードバックなどにより内発的動機づけを促す
・評価シートなどを面談ツールとして活用する方法もある
・ヒアリングした個人情報や機密情報の取扱いには注意する
・部下との位置関係は、対面でなく「斜め」になるようにする。よりフランクな雰囲気で
話せる
私事ですが、前職では月1回のペースで個別面談を、更に週1回のペースで部内ミーティ
ング(情報の共有化や業務の改善提案)をしていました。
これらオフィシャルなコミュニケーションにより、間違いなく職場の雰囲気は良くなり、
業務が円滑に進みました。更に、半年に一度実施していた「評価」が随分とスムーズにい
きました。上司と部下が、普段からお互いに共通認識ができていたためです。
ちなみに私は人事でしたので、新卒や中途採用者に対しても個別面談を実施していました。
1人につき、入社から1ヵ月後、半年後、1年後の3回です。結構大変でしたが、入社し
たばかりの社員は不安や入社前とのギャップを感じているため、それらを解消させるため
に非常に有効でした。
個別面談の効果は、「ジョハリの窓」という有名な心理学からも説明できます。
ごくごく簡単に言うと、人は自分のことを知ってもらえるほど、より円滑なコミュニケー
ションをするようになるというものです。
人や組織に関する悩みはいろいろと尽きませんが、その多くはコミュニケーション不足が
絡んでいます。
個別面談をすると「今まで部下のことを分かっているつもりだったが、実は何も分かって
いなかった…」と驚くことも珍しくありません。
部下一人ひとりと向き合い、部下の内面をよく知ることが何より大切です。
今回のおさらいです。
・コミュニケーションには、フランクなものとオフィシャルなものの2種類ある
・個別面談は計画的、定期的に行い、上司はあくまで傾聴しアドバイスする姿勢が大切
・部下の内面をよく知ることが、仕事や人間関係、職場に良い影響をもたらす
Vol.9 日本で一番大切にしたい会社大賞
先日、「人を大切にする経営学会」主催の第5回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞が開催されました。(ちなみに私は同学会の会員になっています)
人を幸せにする企業を1社でも増やしたいと、毎年開催されています。(ここで言う「人」とは、1従業員とその家族 2外注先・仕入先 3顧客 4地域社会 5株主の5者)
今回は、その受賞企業と受賞理由をご紹介します。(同サイト引用)
Vol.9 日本で一番大切にしたい会社大賞
★経済産業大臣賞 株式会社マルト(食品販売業)
地域のライフラインを守ることを使命としている同社では、東日本大震災が発生した当日、被害がひどい店舗もある中で社員自らが店を開けることを決めて再開した。お客様、従業員、取引先を大切にし、かつ地域社会に貢献する取り組みを行っている。
その取り組みを持続すべく、安全性・健全性を高める経営が高く評価された。
★厚生労働大臣賞 株式会社クラロン(スポーツウェア製造業)
1956年の創業以来、障害者の正規雇用に取り組み、現在の障害者雇用率は実雇用率35.3%(重度ダブルカウント含む)と、福島県トップの雇用率をほこる。
さらに高齢者・女性雇用にも積極的で(最高齢は77歳の女性の営業課長)、地域になくてはならない存在であることが高く評価された。
★中小企業庁長官賞 清川メッキ工業株式会社(メッキ製造業)
ナノレベルの高度なメッキにおいて、毎月50億個の処理を行っても一つも不良品を出さない品質管理の高さや、生産性を高める育成の仕組みに定評がある。さらに人を大切にする経営管理により、女性、高齢者、障害者にも働きやすい職場環境を実現。
業界発展のため、自社の技術を広く同業他社にも伝えるといった活動が高く評価された。
★実行委員長賞 日本植生株式会社(環境緑化製品製造販売業)
創業以来、「国と企業と家庭の一体化」を経営理念の1つとし、「人づくり・物づくり・
顧客づくり」による「三づくり経営」を推進している。社長の60歳定年制や社員持ち株制度、社員の家族との親睦を図る家族会、仕入先・外注先との親睦会など、会社に関する人たちの幸せを追求した経営を行っており、社員を大切にしている取り組みが高く評価された。
★審査委員会特別賞 Acroquest Technology株式会社(IT)
技術者が働きやすい会社にしたいという思いのもと設立。給与・賞与などあらゆる制度に
ついて、社長を含めた全社員で決定する。技術力だけでなく、仕事力・人間力教育も行う。その年間教育時間は社員あたり170時間で、残業時間も業界平均に比べ極端に少なく、社員の健康問題に配慮された取り組みも高く評価された。
★審査委員会特別賞 たんぽぽ介護センター・ステラリンク株式会社(介護サービス業)
イキイキと輝くスタッフと笑顔でサービスを受けるお客様、まさに従業員満足と顧客満足
が両立している介護施設。施設規模は日本最大であるが、規模が大きくなってもサービス
品質レベルは高い。9割がパートだが、お母さんの働く場を提供し、地域社会になくては
ならない存在となっていることが高く評価された。
★審査委員会特別賞 フジイコーポレーション株式会社(除雪機・草刈機製造販売業)
家族主義経営を徹底し、金融機関によるリストラ提案があった際も1人も解雇することな
く、全社員一丸で難局を乗り切り業績を回復させた。工場の床にひざを痛めない塗料を塗ったり、転倒を避けるためのフラット化など、働きやすい環境づくりをしている。
女性・高齢者・障害者・外国人など、あらゆる人材を活用していることが高く評価された。
★審査委員会特別賞 株式会社久保田オートパーツ(自動車リサイクル業)
不要となった車輌を買い取り、まだ使用可能な部分を自動車中古部品として商品化。これ
以上、地球を汚さないようゴミを埋め立てない自動車の解体処理を実行している。また長
年、工場見学の受け入れを実施。今年は46回、見学者は2883名を数えている。
環境問題に取り組み、お客様から喜ばれ、社会貢献している点が高く評価された。
★審査委員会特別賞 株式会社さくら住宅(住宅建設業)
人を大切にする経営を徹底して進めている。全社員が株主として経営参画するだけでなく
「お客様株主制度」も実施。社員第一主義を掲げ、ボーナスは業績の良し悪しや社員間に
よる金額格差を一切設けない。また多くの女性社員を活用している。本社隣にラウンジを
設け、地域住民に憩いの場として提供するなど、地域貢献活動も高く評価された。
★審査委員会特別賞 株式会社ファースト・コラボレーション(不動産業)
社員とその家族に対する幸せの追求が徹底されている。社員一人ひとりのより良い人生の
ために、社員が主役になる会社となることを目指し、フラットな組織づくりに取り組んで
いる。さらに顧客満足度調査ではここ数年、会社・社員が連続表彰されていることも高く
評価された。
★審査委員会特別賞 社会福祉法人白鳩会(障害者支援施設)
創業者は、定職を持つことが出来ずに苦労をしていた躁鬱病の弟をなんとかしてやりたい
と考え創業。農産物加工・販売に至ったのは障害者の自力支援のためだが、増加する耕作
放棄地を借入し耕作することで地域雇用も支えている。売上高経常利益率は常に10%を超え、自己資本は人件費の約2年間分のストックがあることも高く評価された。
★審査委員会特別賞 株式会社こんの(古紙リサイクル業)
戦後ゴミ収集から始めた会社で、現在は古紙専門のリサイクルを行っている。業種的に不
人気である中で社員に誇りを持たせるため、社内イベントの開催、地域貢献、環境問題に
も積極的に取り組んでいる。そうした経営者の姿勢と行動により社員のモチベーションも
高く、地域においても愛される存在になっていることが高く評価された。
★審査委員会特別賞 株式会社障がい者つくし更生会(リサイクル業)
障害者が自ら雇用の場を創造・開拓し、自立更生を図ることを目的に設立。障害者雇用率は81.6%、実雇用率は102.6%(重度ダブルカウント含む)。
さらに健常者並みの高賃金を実現しており、障害者でも高い生産性を上げられることを証
明していることが高く評価された。
「人を大切にすることで業績が伸びる」― そんなの理想論だよと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのような企業が実際に存在していることも確かです。
毎年思うのですが、この賞に選ばれる企業に共通することは「経営者の理念が明確・本気」ということです。紆余曲折を経て、その理念にたどり着いた経営者も少なくないようです。
Vol.8 求める人材を採用するには②~求人票作成のポイント
さて今回は前回に引き続き採用について取り上げます。
今回は、どのような求人内容にすればエントリーが増え、求める人材が採用できるのか、
そのポイントについて簡単にご紹介します。いずれも当所で実践し成果があったものです。
求人票の内容は、主に次の4つのカテゴリに分けることができます。
①求める人材
②仕事内容
③就業条件
④企業情報
では順にご紹介していきます。
①求める人材
・価値観を伝える
単に求める人材像だけでなく、企業の価値観(なぜそのような人材を求めるのか)を伝
えることで、求職者に共感させる。
・何度も伝える
求人票の中に、随所で何度も価値観(求める人材像)を伝えることで会社の“本気度”が
伝わる。本気度が伝われば伝わるほど、それに共感した求職者のエントリー意欲がかき
立てられる。
②仕事内容
・具体的に伝える
求職者は、自分が働く姿をイメージできるほどエントリーしやすくなる。仕事内容は具
体的に伝えるためには5W1Hを意識し、1日の仕事の流れや定量要素を入れると効果
的。写真も実際に働いているシーン(でかつ笑顔)がベスト。
・やりがいを伝える
仕事のやりがいや醍醐味、キャリアアップなどを伝え、求職者の内発的動機づけを促
す。具体性と並び非常に大切です。
・疑問や不安要素を払拭する
求職者は、仕事内容に疑問や不安を抱くと、それだけでエントリーすることを避けやす
いもの。求職者になったつもりで客観的に仕事内容を見て、疑問や不安に思うだろう要
素については、事前に求人票の中で払拭・解消しておく。(営業職の求人例「ノルマは
ありません」「飛び込み営業はありません」「営業エリアは○○~○○です」)
③就業条件
・不満要素は払拭要素とセットで伝える
長時間労働や休日出勤など、求職者が不満になりやすい要素はなるべく伝え、ミスマッ
チを防止する。その際、その不満要素を打ち消すくらいの払拭要素とセットにして伝え
る。(例「労働時間は長いですが、その代り一生役立つ○○のスキルが身に付きま
す」)
④企業情報
・企業の魅力を伝える
社風や強み、福利厚生、独自の制度や取組みなど企業の魅力を伝え、他社との差別化を
図る。
・安心感を与える
求職者とって未知なる企業は不安そのもの。そこで経営者の思いや先輩社員の声
(顔)、社員教育、平均勤続年数や平均年齢、会社業績など安心感を与えられる要素を
伝える。
他にも自社HPを活用したり、写真を掲載したり、魅力的な表現やキャッチフレーズを用いたりするなど、いくつかポイントがあります。
ちなみに私は前職で人事をしていたとき、面接の場でエントリー者に対して、求人票のど
こに惹かれたかを必ずヒアリングするようにしていました。(ちょっとしたマーケティン
グですね)
いずれにせよ、求める人材を採用するには企業努力は欠かせません。
では今回のおさらいです。
・求める人材は、価値観を何度も伝える。
・仕事内容は、具体性・やりがい・不安払拭の3つを伝える。
・就業条件は、不満要素と払拭要素をセットで伝える。
・企業情報は、魅力や安心感を伝える。
Vol.7 求める人材を採用するには①~ターゲットは広く、ネットを活用する
さて今回は採用について取り上げます。
昨年くらいから人手不足が顕著になってきました。企業の持続・発展には、いかに人材を確保・育成できるかにかかっていると言っても過言ではないでしょう。
労働力人口の減少や企業の人材囲い込み等により、今後ますます求職者数は減っていくと思われます。
ですので、これからの採用活動は「在職中の人(で転職を考えている人)」もターゲットに考えることが必要になってきます。
そこで今回は、その場合のポイントを上げてみます。
①採用は4月がチャンス
②求人は2ヵ月早めに出す
③ネットを活用する
④選考は土日や夜でも対応する
補足します。
①ですが、毎月発表される職安の新規求職者登録数を見ていると、毎年必ず4月に大きな
ピークを迎えます。(まあ、これはある程度予想できますね)
求職者数が多ければ多いほど、求める人材に巡り会う可能性は高まるわけですから、4月は採用のチャンスです。
逆に毎年12月は、求職者数はかなり減ります。
②ですが、在職中の人が転職するには約2ヵ月かかります。在職中に転職活動をし、更に
引き継ぎなどもあるでしょうから、それくらいはかかってしまうということです。
例えば4月の採用を狙う場合、2ヵ月早めということですから、まさに今、この2月から
求人を出すべきです。
「4月に出せばいいや」なんて思っていると、まだ見ぬ良い人材を採り逃すことになるか
もしれません。機会損失ってやつです。
③ですが、在職中の人の多くは日中に仕事をしているため、やはりネット中心に情報収集
や転職活動をすることになります。そうでなくても、今は職安よりもネットで就活する人
の方が多いと聞きます。
そして、是非自社HPやSNSを活用しましょう。これらは原則、字数制限や写真数制限
がなく、たくさんの情報を発信できます。事業内容や社風、経営者の人柄なども伝わりや
すいですしね。
職安などに求人を出す場合も「詳細は当社HPをご覧ください」などと誘導する工夫も効果的です。
④ですが、これは在職中の人への配慮ということです。
その旨を求人票に記載しておくと親切ですね。
それでは、一体どんな求人内容にすれば、エントリーが増え、求める人材が採用できるの
でしょうか。これについては、後日取り上げたいと思います。
では今回のおさらいです。
・求人活動は、現在在職中の人もターゲットにする
・特に求職者が増える4月がチャンス
・求人は2ヵ月早めに出し、HPなどを大いに活用する
Vol. 6 部下の自立性を高める~仕事を任せ考えさせる
先日、「部下の自立性」をテーマにしたワールドカフェに参加しました。
ワールドカフェとは、少人数のグループに分かれ、与えられたテーマについて自由にリラックスして対話するディスカッションの1つです。途中、メンバーの組み合わせを変えながら対話を続けることで、あたかも参加者全員で対話をしたような効果が得られます。
そこで今回は、そのときに得た気づきを含めて、部下の自立性を高めるためのヒントをご紹介します。
「言われたことしかやらない…」
「やる気があるのかよく分からない…」
「仕事は自分で見つけるものだ」
経営者や上司(以下「上司」)のこのような嘆きってよく聞きますよね。
どうしたら、部下が自ら進んで仕事をするようになるのでしょうか。
その1つが、仕事を「任せる」ことです。
しかし、ただ任せればいいってものではありません。そこで、いくつかのポイントをご紹介します。
①仕事の意味付けをする
部下に仕事を任せるとき、例えば「このデータを資料としてまとめて欲しい」などと「結果」や「結論」しか指示していない上司は結構います。
これでは、部下はその仕事の意味をよく理解しないまま行う恐れがあります。
そこで、例えば「これは○○を決定する上でとても重要な資料になる」など、その仕事の意味付けをしたり必要性を伝えることがポイントです。仕事に対する納得性が高まります。
②権限を与える
先ほどの例で言えば、例えば「○○の部分は、○○さんの自由な発想に任せるよ」などと、一定の権限を与えた上で仕事を任せることがポイントです。
以前、当メルマガでお伝えしましたが、任せる(裁量権や決定権を与える)ことは「動機づけ要因」のうち「内発的動機づけ」に該当し、やる気を引き出す最たるもののうちの1つです。
誰でも自分が思うように仕事を進められたら、これほど面白いものはありません。
③考えさせる
自立性を引き出す上で大切なのは、自ら考えることを習慣化させることです。ですから上司はすぐに答えを言わず、「○○さんだったらどうする?」とか「なぜそう思うの?」など、自ら考えるよう促すことがポイントです。
また仕事を任せたはいいものの、自由気ままに仕事を進められても困ります。
そこで重要になってくるのが、経営理念(事業方針やクレド、フィロソフィーなど)です。
あくまでも理念に基づいて考えさせることで、企業の目指すべき方向性や目標、目的から逸脱することを防ぐわけです。いわば理念は「考える道しるべ」です。
④見守る
仕事を任せたきり放置している上司も案外多いもの。定期的に報告させたり、チェックすることもお忘れなく。
会社のイベント(懇親会や旅行など)の企画・運営など、ほとんど部下に任せた方がよいケースもあります。
いずれにせよ、部下を信頼し、普段は遠くから見守り必要ならば助けにいく、といったスタンスが大切です。
⑤我慢する
昨今はどの企業も少数精鋭ということもあり、「自分でやった方が早い」と、部下に仕事を任せない上司がいます。
また部下に考えさせることをせず、すぐに答えを言ってしまう上司も多いものです。
任せるには時間を要します。しかしこれも部下育成のため。上司はグッと我慢する忍耐が必要です。(これがある意味、最も難しかったりしますが…)
ちなみに、先日参加したワールドカフェでは、うまく部下の自立性を引き出している企業(リッツカールトン大阪・ネッツトヨタ南国など)のドキュメンタリー映像を観賞し更に対話を深めたのですが、これら企業には以下のような共通点がありました。
・信頼して部下に仕事を任せている
・クレドに基づいて考えさせている
・職種間を超えて議論させている
・上司は必要になるまで何もしない
では今回のおさらいです。
・部下の自立性を高めるには、信頼し一定の権限を与えた上で仕事を任せること
・部下に考えさせ、見守ること(そしてときとして我慢!)
Vol. 5 評価査定①~賞与査定は逆算の発想で
賞与査定は通常、当期における業績や成果、会社貢献度などを元に行うと思います。
小規模の企業などでは、完全に経営者の頭の中で行われることも珍しくありませんね。
そうではなく、一定の評価システムを導入している企業の場合、予め評価項目が羅列された「評価シート」なるものにそって点数を付け、その点数順にランク付けし賞与を決定する「点数評価」が一般的だと思います。(この点数評価という表現は、私が普段、勝手に使っている表現ですので、あしからず)
ただし私はこの点数評価は、あまりお勧めしません。
理由は多々あるのですが、例えば経営者や上司が思い描く評価と必ずしも一致しないからです。
私は仕事柄、経営者や上司の方に「従業員(部下)を順位づけできますか?」と尋ねることがあります。
すると多くの経営者や上司は、何ら躊躇なくスラスラ順位づけをします。これは、既に普段から頭の中で自然に順位づけをしているということです。
その順位づけは時として主観的であったりしますが、だからといって、あながち的外れでもなかったりします。
ですので、賞与査定は点数評価でなく、次のような先に結果ありきの「逆算評価」がスムーズであり現実的です。
①経営者や上司が思う評価の高い順に、従業員を書き出す
②なぜそう思うのか、なぜその順位になるのか、その理由を書き出す
(ここで明確な理由が出なければ順位を再考する)
③(複数人で検討するなど)客観的な視点で全体を見直し、必要ならば順位を変える
この逆算評価は、人と人を比べて評価する、いわゆる「相対評価」です。
そして賞与査定とは、限られた賞与原資を分配するということですから、相対評価である逆算評価による方法は理にかなっているとも言えます。
ちなみに評価は、何も賞与査定だけが目的ではありません。人材育成という大切な目的もあります。
人材育成は、普段から従業員一人一人を気にかけ、都度フィードバックすることがポイントです。
ですので、今回お伝えした逆算評価や相対評価はむしろ不向きで、人と比較しない「絶対評価」で行うことが望ましいと言えます。
要するに評価は、目的によって査定方法を変えることが大切、ということです。
(相対評価や絶対評価、人材育成を目的とする査定については、また今後取り上げます)
今回のおさらいです。
・賞与査定は、先に順位づけし、その後に理由づけをする「逆算評価」で行う方が現実的
・評価はその目的によって、査定内容や査定方法を変えることも大切
Vol. 4 賃金とモチベーション②~インセンティブの弊害
会社は、営業職などに成果の対価としてインセンティブ(歩合給や業績給などとも言います)を払うことってよくありますよね。
その中でも特に「○○をしたら○○円払う」という、最初から約束されたインセンティブのことを「交換条件付きインセンティブ」と言います。
交換条件付きインセンティブ(賃金)は、従業員のやる気につながりやすいのも事実ですが、前々回お伝えしたようにそのやる気はなかなか長続きしません。
一方で、次のようなさまざまな「弊害」があるのも事実です。
①内発的動機づけを失う
②創造性が低下する
③成果が下がる
④短絡的思考になる
⑤倫理に反しやすくなる
補足します。
①ですが、例えば自ら進んでボランティアをやっている人に対して、交換条件付きインセンティブを提示したらどうなるでしょう。
恐らくその瞬間にやる気が失せるでしょう。怒り出す人もいるかもしれません。
「そんなつもりで(お金欲しさで)やっているんじゃないんだ!」「人を金で動かそうとしているのか!」という気持ちが働くのです。
通常の我々の仕事においても、原則同じことが言えます。
特に内発的動機づけ(やりがい・社会貢献・成長感など)を感じて仕事をしている人ほど、交換条件付きインセンティブは逆効果になりやすいのです。
②~④ですが、実は交換条件付きインセンティブは「視野を狭める」効果があります。
インセンティブ欲しさに、さまざまな発想やアイデアを生もうとする思考が停止し、インセンティブを得ることだけに考えが集中しやすくなるのです。
ですので、仕事が単純(自分の創造性を反映させる余地が少ないもの)であればあるほど、交換条件付きインセンティブはむしろ効果的です。
ただし今の時代の多くの仕事は「付加価値」が求められます。創造性やアイデアが重要です。
交換条件付きインセンティブは、そんな創造性やアイデアを生み出すことを阻害し、仕事の質を低下させやすくします。
⑤ですが、人は交換条件付きインセンティブを提示されると、インセンティブ欲しさにルール違反やコンプライアンス違反を犯しやすくなります。
特に営業ノルマなど、仕事の成果に対するプレッシャーを大きく感じている人や、今現在、経済的に余裕がない人などは陥りやすくなります。
今回ご紹介したものは、特にアメリカなどで古くから実験によって実証されているも「モチベーション理論」に、私なりの経験則に基づいたエッセンスを加えたものです。
もちろん個人差はありますが、誰しも多かれ少なかれ心当たりがあるのではないでしょうか。(モチベーション理論はまだまだありますので、今後ご紹介したいと思います)
「じゃあ一体全体、どうやってインセンティブや賃金を払えばいいんだよ!?」なんて声が聞こえてきそうですね。
そのあたりのお話は今後取り上げます。
今回のおさらいです。
・交換条件付きインセンティブは短期的なやる気を生むが、一方でさまざまな弊害を生む
Vol.3 人を大切にする、いい会社の経営指標
先月、「人を大切にする経営学会」が発足しました。
当学会は、人を大切にする経営・企業を研究し、その研究結果を広く社会へ還元・啓蒙することで、よりよい経営を行う企業を増やすことを目的としています。
発起人は、法政大学の坂本光司教授らです。(同教授はいくつもの著書を出され、講演活動もされていますのでご存知の方も多いかと思います。ちなみに焼津市出身です)
人を大切にすることが経営にどんな影響をもたらすのか。実際にどんな企業がうまくやっているのか。そんなところに関心がある私は、早速入会してみました。
当学会の活動等については、また今後ご紹介していきたいと思います。
さて今夏、坂本教授の講演を聴く機会がありました。
教授は「いい会社」を次のように定義しています。
・「正しいか正しくないか」で経営判断する会社
・人間の命と生活を守る会社
・業績が伸びている会社
過去に調査した国内7000社のうち「いい会社」は700社ほどあり、「いい会社」にはいくつか共通する経営指標があるようです。いくつかご紹介します。
★過去5年間、社員数が維持・拡大している
★過去5年以上リストラをしていない
★定期的に経営者や部門長が社員1人1人と面談している
★社員1人あたりの月平均残業は10時間以下
★経営理念の全社員への浸透のための仕掛けが3つ以上ある
★会社主催の親睦会が年5回以上開催され、社員の参加率は70%以上
★出産や子育て、更には入院等の支援のための独自の制度が3つ以上ある
★メモリアル休暇制度や5日以上連続して取得できるリフレッシュ休暇制度がある
★全社員の過去3年間の有休平均取得率は70%以上
★社員やその家族のメモリアルデーには、会社としてメッセージやプレゼント等を送っている
★社員1人あたりの人材育成経費は年間10万円以上で、総実労働時間に占める社1人あたりの研修時
間は5%以上
★社員の資格取得奨励制度がある
★社長の評価配分は20%程度以下で、かつ加点評価がある
★管理職の評価は部下を育成したか否かを重要視している
★総資本対自己資本比率は50%以上であり、かつ過去3年間増加傾向である
★過去5年間の売上高対経常利益率はほぼ5%以上
★内部留保金が年間人件費総額を上回っている
★財務内容等、主要な経営情報は全社員に公開している
★過去5年以上、仕入先や協力企業等に対し、一方的なコストダウンをしていない
★取引依存度が70%以上ある仕入先や協力企業等の業績は過半数以上が黒字
★仕入先や協力企業等への支払いは手形でなく全て現金決済である
★代金の締め後の支払は20日以内である などなど
※ちなみに取引先も「社外社員」として一社員としてみています。
「人を大切にすれば業績は伸びる」
いつ聴いても教授の話はブレませんが、「きれいごとだ」「理想論だ」と感じる人もいるかもしれませんね。
ただ実際に、このような「いい会社」が存在しているというのも事実です。
みなさんはどう思われますか。
Vol.2 賃金とモチベーション① ~不満足要因を解消する
今回は、恐らく多くの方が気になる賃金とモチベーションの関係について取り上げます。実に興味深い、奥深いテーマです。
前回のおさらいですが、賃金は動機づけにもなるし不満にもなります。
例えば「昇給した」「賞与が出た」場合、(その金額等にもよりますが)通常、社員の多くは喜ぶでしょうし、やる気を出すでしょう。
一方、次のような場合は不満に感じます。(よくある賃金不満)
①賃金が低い
②なかなか昇給しない、昇給ルールが不明
③インセンティブのルールが不明(特に営業)
④残業代や休日手当がちゃんと払われていない
賃金に対する不満がある場合、昇給や賞与によってその不満が解消するかというと、残念ながらそのようなことはありません。不満はずっと残ったままです。(前回お伝えした「動機づけ要因と不満足要因は別々に作用する」っていうアレです)
しかも悲しいかな、昇給や賞与による「やる気効果」は長続きしません。やがて「普通の賃金」「過去の賃金」になってしまうからです。
昇給や賞与も大切ですが、それよりもまず賃金に対する不満足要因をいかに解消するかを考え実行する方が賢明なのです。
例えば①についてですが、「賃金が低い」と嘆く社員がいたら、何をもってそう言うのか、その根拠をよく確認してみることです。
案外、根拠が曖昧だったり、自分の賃金を「手取り」でみていたり、年収ベースでなく月収ベースでみていたりするものです。(私は前職で人事をしていたとき、このようなことがよくありました)
さらに、県内の同規模他社や同業他社の賃金と比較し、同等以上であることを客観的に証明できると効果的です。(当所にはそのような県内賃金データがありますので、必要な方はお申し出下さい)
②の不満に対しては、昇給ルールを示すことです。
ただし明確なルールを作成できればよいのですが、中小企業は「将来の賃金」までなかなか約束できないのも事実でしょう。
そこで経営者の裁量が効く賃金表や会社業績に応じて変動する賃金表など、一定の工夫が必要です。(ちなみに当所はそのような賃金制度をご提案するのが得意です)
③の不満に対してもルール化することになりますが、コチラは注意が必要です。
インセンティブは(金額や払い方、個人にもよりますが)予めルールを明確にし過ぎると、逆にさまざまな「弊害」を生む恐れがあります。(インセンティブとその弊害については、アメリカなどで検証実験が進んでいます。またいつかお伝えする予定です)
④の不満に対しては、適正に対応する(適正に払う・振替を与える)ことです。
例えば賞与を払っている会社であれば、その賞与原資の一部を削ってまでも残業代や休日手当に充てた方が賢明です。
では今回のおさらいです。
・賃金はやる気にもなるし不満にもなる。但し、やる気は一過性であり不満はずっと残る。
・昇給や賞与もいいが、まずは賃金の不満足要因を解消することに努める。
Vol.1 動機づけ要因と不満足要因
昨今、多くの経営者や管理職、リーダーは部下や社員のやる気に悩んでいます。
そこで今回は、ハーズバーグ(アメリカの心理学者)の有名な「動機づけ論」のエッセンスを私なりの(経験則に基づいた)解釈でご紹介します。
この動機づけ論はご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、基本かつ非常に大切です。(今後も恐らく何度も取り上げることになると思います)
人がやる気になる「動機づけ要因」には、例えば次のようなものがあります。
①仕事そのもの(やりがい)
②自己決定
③達成感
④有能感(自分はできるんだと感じること)
⑤成長感
⑥承認(ほめられる)
⑦目標
⑧昇格
⑨賃金 など
このうち①~⑤は「内発的動機付け」といって、自分の心の中からやる気がわいてくるもので、これに勝る動機付けはありません。
⑥~⑨は「外発的動機付け」といって、外部から与えられやる気がわいてくるものです。
実務では、これらの動機づけ要因を意識した指導やコミュニケーションをとることがポイントになります。
さて一方で、満たされなければやる気が下がってしまう「不満足要因」もあります。
①賃金などの労働条件
②人間関係
③会社の方針
④労働環境
⑤管理
⑥評価 など
これら不満足要因は非常にやっかいです。
なぜなら、これらの不満を解消してもやる気にはなかなか結びつかないからです。
でも放っておけば不満はどんどん膨らみ、やる気は失せ、やがて退職に至ってしてしまう恐れもあります。
ちなみに賃金は両方に入っていますが、短期的なやる気にはつながっても、本質的(長期的)なやる気にはなかなかつながりません。(賃金とモチベーションの関係については今後取り上げる予定)
そして重要なポイントがあります。
それは動機づけ要因と不満足要因は「別々に作用する」ということです。
例えば、いくら部下に対して普段からほめたり、やりたい仕事を与えるなどしてやる気を引き出すことに努めていても、一方で職場の人間関係が悪化していたり、経営方針がコロコロ変わるような職場だと、それはそれでやる気が下がってしまうのです。
一方でどんなにやる気を高めても、一方で不満は残っているということです。
実務では、社員の不満足要因を払拭することがポイントになります。
今回のおさらいです。
・動機づけ要因と不満足要因があり、これらは別々に作用する
・動機づけ要因(特に内発的動機付け)を意識してやる気を高め、一方で不満足要因を払拭する
是非、実務で意識・実践してみてください。ではまた。