Vol.20 新卒採用は戦略的に~就職白書から読み解く傾向と対策
いよいよ今月1日から、来卒の採用活動・就職活動が本格的に始まりました。
年々売り手市場の傾向が強まる中で、どのように新卒や若年者を採用・確保すればよいのかは、多くの企業にとって大きな課題となっています。
そこで今回は、先日リクルート社から発表された「就職白書2016」における各アンケート結果を元に、昨今の新卒採用活動における傾向と対策を考えます。
・「面接者数を100」とした場合の①内定出し者数の割合 ②内定者数の割合(P10)
2016年卒 ①18.5 ②10.1
2015年卒 ①15.5 ②9.6
2014年卒 ①12.7 ②8.2
・「内定出し者数を100」とした場合の①内定辞退者数の割合 ②内定者数の割合(P10)
2016年卒 ①45.6 ②54.4
2015年卒 ①38.0 ②62.0
2014年卒 ①35.5 ②64.5
→年々、面接者数に対する内定出者や内定辞退者の割合は増加している。
→新卒1人を採用するにあたり、約10人と面接し約2人に内定を出す必要がある。
※2017年卒は、更に面接数や内定出し数を増やす必要があると思われる。
・就活中、学生が①知りたいと思っていたもの ②知ることができたものの割合(P15)
具体的な仕事内容 ①69.1 ②58.3
採用選考基準 ①61.8 ②38.6
求める能力や人物像 ①51.2 ②49.7
仕事のやり方や進め方 ①48.3 ②36.9
社員の労働時間 ①45.5 ②34.0
社内の人間関係 ①39.0 ②21.7
→総じて学生が知りたがっていた情報を企業は伝えきれていない。
→企業は、特に採用基準や仕事のやり方・進め方、労働時間、人間関係についてもっと
伝える努力をする必要がある。
・企業を選ぶときに最も重視した条件(P20)
1位 業種
2位 職種
3位 勤務地
→内定辞退の理由も、この3つが志望と合わなかったというものが上位を占めている
(P21)。
→ミスマッチを防ぐために、企業は業種・職種・勤務地について、十分な説明を行い学
生の志望をよく確認する必要がある。
・12月時点での1人あたりの内定取得社数(P20)
1社 45.8%
2社 25.1%
3社 14.6%
4社 5.8%
5社 4.6%
6社 4.1%
(平均社数…2.17社)
・最初の内定取得後の活動継続状況(P20)
続けた 57.5%
続けなかった 42.5%
→7割の学生は内定取得社数が2社以下であり、最初の内定を得ると半数近くの学生は
就職活動を終了している。
→企業は、欲しい人材がいれば早めに内定を出す必要がある。
※今年は短期決戦が故に、最初の内定を取得しても企業研究不足等の理由で就活を続
ける学生が増えることも考えられる。
・企業からみた学生の戦力化までの期間の理想と現実(P24)
理想…半年~1年未満 24.3%で最多
現実…3年以上 26.9%で最多
→企業は、新卒が半年から1年で戦力になってくれることを期待しているが、実際は3
年以上かかっている。
→新卒採用は、戦力として使えるまで3年くらいかかる(じっくり育てる)という心構
えがまず必要。
・2017年卒の採用活動スケジュール(P26~27)
採用に関する情報提供 3月(77.2%)、1月・2月(各5%)
自社の説明会・セミナー 3月(65.2%)、4月(22%)
面接 4月(33.9%)、6月(27.4%)、5月(16.7%)※67.9%
内々定・内定出し 6月(41.6%)、5月(22.1%)、4月(14.4%)※44.1%
※…採用選考解禁(6月)前までの累計
→採用選考解禁の6月前までに、面接は7割近くの企業が、内々定・内定出しは半数近
くの企業が実施するとしている。
→他社に後れを取られないためにも、4~6月にかけて面接や内々定・内定出しを実施
したいところ。
※倫理憲章(特に採用選考解禁時期)を守ろうとする企業は、必ずしも多くないか
も。
今回のおさらいです。
・年々、企業は新卒を採用しにくくなっている(企業負担が増している)
※そのため、新卒を採らない・新卒にこだわらないという選択肢もあり得るかも
・新卒1人採用するには、目安として10人以上と面接し2人以上に内定を出す必要がある
・採用活動(会社説明や面接)は早めに行い、良い人材が見つかれば早めに内定を出す
※経団連の倫理憲章を守っていると、後手後手に回る恐れがある
Vol.19 求人を出さなくても人が集まる会社~沢根スプリング社視察報告
先日、浜松市郊外にある沢根スプリング社へ企業視察してきました。
バネを製造している社員50名ほどの中小企業で、業績は右肩上がりです。
同社は、2014年「日本で一番大切にしたい会社大賞」において「中小企業庁長官賞」を受賞しています。
今回は、そのときの視察報告と所感をお伝えします。
・経営理念
同社の経営理念は「人生を幸せにする」「会社を永続させる」。
人生を幸せにするための取り組みとして、例えば残業はほとんどなし、有休取得の促進(取得率81%)、社員文集(毎年作文を書き、退職時に冊子としてプレゼント)や誕生日プレゼントなどさまざまなことを実施している。
食堂に掲示されている「100年カレンダー」は、時間(人生)は無限ではないことに気づいてもらいたいとの社長の思いが込められている。
世界一周旅行が夢だと語った社員に4ヵ月の休暇を与え、夢を実現させたことも(帰国後は社内で報告会を開催)。
・経営戦略
同社の経営戦略は「規模を大きくしない」「世界最速工場を目指す」。
これらの戦略を遂行するために、取引先1社ごとの売上比を下げる、販売先の業種や地域のシェアを増やす、小口市場を拡大するなどいろいろ取り組んでいる。
バネ1本から注文を受け、近年、システム化により即日配送を可能にしている。
「作り方」の差別化を実現すべく、職人を育てることにも尽力している。「全社員が禁煙者」という差別化も目指しているが、こちらは少し難しいとのこと。
・人材
人材育成の取組みとして、週1回開催の勉強会「沢根塾」や、6S活動、部署間を横断した
プロジェクト活動など、社員同士で考え、切磋琢磨できる場を提供している。
更に横のコミュニケーションを強くするため、今後はあえて違う部署の仕事を経験させた
いとのこと。
評価は、面談の予定日や実施日が一覧表として食堂に掲示され可視化されている。
採用は現在年に1人だけ。理由は、社員が辞めない・採用して欲しいと勝手に人が集まっ
てくるため。
・経営者の仕事
沢根社長曰く、経営者の仕事とは「①ビジョンを示す ②決定する ③職場環境をよくする ④先頭に立って仕事をする ⑤会社を永続させる」この5つとのこと。
【所感】
同社は前述の大賞受賞のほか、さまざまな書籍で紹介されていることもあって、高い関心
をもって視察に参加しました。
経営理念もさることながら、経営戦略がかなり明確であることに驚きました。中小企業だ
からこその差別化を図るための、実に理にかなった戦略です。
そして、理念と戦略がしっかりと関連付けられていて、社員へ周知徹底されていることに
深く感心しました。(工場見学では、各持場の担当者から会社目標や戦略を意識した説明
をしていただきました)
この人材難・超売り手市場の時代に、「勝手に人が集まってくるから」という理由で、わざわざ求人を出す必要がないというのは実に羨ましい限りです。
同社の全て(社風や魅力)を物語っているように感じました。
今回のおさらいです。
・理念やビジョンを実現するために、何か具体的な取組みができないか考えてみる
・中小企業だからこそできる戦略や差別化を考えてみる
・経営者の思いや信念、理念を可視化してみる
・社員同士が自発的に教え合ったり、活動できるような場を提供してみる
Vol.18 売り手市場でワガママ化!?~意識調査から見えてくるいまどきの新入社員像
先日、日本生産性本部から2015年度新入社員の秋の意識調査結果が発表されました。
今回はその調査結果から、いまどきの新入社員の傾向を自分なりに分析してみようと思い
ます。
過去5年くらいの(秋の)調査結果を見る限り、年々(その年により増減する場合もあり
ますが)その傾向が強くなっていると感じられるものをピックアップしてみます。
・転職意識(売り手市場観)が強まっている
「条件の良い会社があればさっさと移る方が得だ」の問いに対して「そう思う」が48.4%。【設問Q6 e】
(14年度45.3%、13年度41.4%、12年度36.2%、11年度40.7%、10年度28.3%)
「転職についてどう考えますか?」の問いに対して「それなりの理由があれば何度しても
かまわない」が20.9%。【設問Q9 a】
(14年度20.2%、13年度19.1%、12年度16%、11年度17.3%、10年度16.9%)
このほか「それなりの理由があれば1~2度の転職は仕方がない」という回答は、およそ
50%前後で毎年推移している。
「1つの会社に最低でもどのくらい勤めるべきだと思いますか?」の問いに対して「2~
3年」が48.8%と急増。【設問Q9 b】
(14年度39.5%、13年度40.6%、12年度40.3%、11年度35.3%、10年度37.2%)
・残業より自分の時間を大切にしたい人(ワークライフバランス重視型)が増えている
「残業は多いが仕事を通じて自分のキャリア、専門能力が高められる職場」「残業が少な
く平日でも自分の時間をもて、趣味などに時間が使える職場」のどちらかが好みか聞いた
質問では、前者が18.9%、後者が81.1%で過去最高。【設問Q5 d】
(後者:14年度70.1%、13年度69.1%、12年度70.5%、11年度67.9%、10年度65.8%)
・自分のキャリアを重視する人(キャリア重視型)が増えている
「自分のキャリアプランに反する仕事をがまんして続けるのは無意味だ」の問いに対して
「そう思う」が43.6%と過去最高。【設問Q6 a】
(14年度37.5%、13年度42.4%、12年度26.5%、11年度26.3%、10年度25.6%)
・仕事を通じてかなえたい夢がある人が減っている
「自分には仕事を通じてかなえたい夢がある」の問いに対して「そう思わない」が56.9%。【設問Q6 h】
(14年度55.2%、13年度48%、12年度49.3%、11年度47.6%、10年度41.7%)
では、これらの結果や近年の傾向の背景を少し考えてみます。
「転職意識が強まっている」というのは、近年の人材不足や景気回復(への期待感)、後
述するキャリア重視志向が背景にあるのではと推測します。
人材不足→求人増→それでも人が採れない→賃上げや正社員化など→新卒採用・転職市場
の活性化
このような図式が成り立っているのではないでしょうか。
「超売り手市場」により新卒・若年者(求職者)が会社を選ぶ時代になってきたというこ
とです。
そうすると次の着眼点として、新卒・若年者は何を基準に会社を選ぶのかということにな
りますが、そのキーワードが「キャリア」とか「社会貢献」です。
昨今は学校などでしきりに「キャリア教育」に力を入れていますし、特に東日本大震災後
は国民全体に社会貢献への意識が強まりました。
このあたりが(前述の売り手市場と相まって)「キャリア重視型」の傾向が強まっている
理由だと推測します。
その他、新卒・若年者の会社選びのキーワードとして「ワークライフバランス」とか「ブ
ラック企業」も無視できないでしょう。
これらは昨今、社会問題としてよくメディアで取り上げられていることもあり、学生・若
年者は敏感になっています。
特に最近は、女性の社会進出についての話題をよく耳にするようになってきましたが、必
ずと言っていいほどワークライフバランスや長時間労働の課題がついてまわります。
また私は、仕事柄・個人的な付き合いで学生や若年者と話す機会がありますが、「ブラッ
ク企業」という言葉には本当に敏感です。
このような中、残業が少なく自分の時間が取りやすい会社を希望する「ワークライフバラ
ンス重視型」の傾向が強くなるのは必然、といったところではないでしょうか。
(ただ個人的には、何でもすぐに「ワークライフバランス」とか「ブラック」と言う風潮
にうんざりしていますが…)
誤解を恐れずまとめれば「新卒・若年者は、超売り手市場でワガママに、そして昨今の社
会問題に敏感になっている」といったところでしょうか。
但しこの調査は、あくまで入社半年後に実施したものですので、今後の長い社会人生活に
おいて考え方が変わっていくことも当然あります。
皆さんはこの調査結果、どう感じましたか?
おさらいです。
・超売り手市場で新卒・若年者が会社を選ぶ時代になっている。良い人材を採用・確保す
るための企業努力がますます欠かせない
・キャリア重視型、ワークライフバランス重視型の新卒・若年者が増えている
・ワークライフバランスやブラック企業など、昨今の社会問題に敏感になっている
Vol.17 大人の発達障害を考える~職場における理解と対処法
皆さんは「発達障害」って聞いたことがありますか。
生まれつきの脳の機能障害による、認知や言語、運動、社会生活スキルなどに偏りや遅れがある特性のことで、100人中3~4人の確率でいます。
先日、そんな発達障害について専門の産業カウンセラーの話を聴く機会がありましたので、今回はその時の内容をお伝えしたいと思います。
発達障害はどんな特徴や問題があるのでしょうか。いくつかまとめてみます。
・暗黙のルールが分からなかったり、その場の空気が読めない
・「はい」と返事はするができていないことが多い(嘘や言い訳が多い)
・上司の指示をそのまま受けたり、深く考えてしまう
・仕事の変化についていけなかったり、仕事を先に延ばす
・計画性がなく、管理や段取りが苦手
・コミュニケーションが苦手
・高学歴だが仕事のでき具合が見合わない
・特定の物事に強いこだわりがある
・注意力や集中力がない
・メンタル疾患になりやすい
・何か1つのことに秀でていることが多い
(発達障害は偉人やタレント、医師などにも多い)
では、どのように対応すればよいのでしょうか。まとめてみます。
・職場で発達障害の知識をもつ(全てがワガママや努力不足、配慮がないわけではないこ
とを理解する)
・通訳となるキーパーソンをつける(窓口になる人はなるべく限定する)
・人格を否定しない
・仕事は口頭でなくメモやメールなど文書で一つずつ伝える
(発達障害は究極の「シングルタスク」。仕事を1つ1つ可視化し、できたら消してい
く)
・図やイメージ、フローチャートなどを使い本人用のマニュアルを作る(作らせる)
・仕事をパターン化する
・些細なことでもメモを取らせる
・資料などしまう場所を決めておく
・職場環境を本人に合わせる
・本人の適性に合った職務を与える
(発達障害の「神経質な性格」を「都度確認するのが得意」「神経質力」と捉え、社員の
スケジュール管理やミスがないかチェックする仕事に就かせ上手くやっている会社あ
り)
・場合により専門機関に相談する。助成金を利用できることもある
(静岡障害者職業センター、障害者職業総合センター、厚労省発達障害者の就労支援な
ど)
また実際問題として難しいのは、本人に発達障害である(可能性がある)ことを気づかせたり、病院へ足を運んでもらうことでしょう。本人にストレートに言えば、激高される可能性があります。
個人的にはこの「発達障害」という言い方をまず変えた方がいいと思いますが、それはさておき、例えば次のような対応が考えられます。
・(周囲が困っている場合は)本人へ明確にその旨を伝え気づかせる
・「今まで人と違うって言われたことはない?」「それで困ったことはない?」と聞いて
気づかせる
・「試しに『AQJ』(後述参考)やってみる?」「(AQJをやらせた後に)具体的な判断
をしてもらうために、一度一緒に専門医へ行ってみない?」と促す・家族に協力を仰ぐ
ちなみに、発達障害かどうか調べる方法として「AQJ」というチェックリストがあります。ネットで検索できますので、興味がある方は一度試してみるといいと思います。
(カウンセラーの方も利用しているそうで、50点中27点以上でその傾向が強くなり、33点以上になると可能性有と判断するそうです)
おさらいです。
・まずは職場において発達障害について理解を深める
・発達障害の特性は根本的に変えられないため、精神論でなく現実的な対処法が必要
(例 仕事は1つ1つ可視化して伝える)
・本人と他の社員(職場)とのパイプ役となる、理解あるキーパーソンをつける(これが
ある意味一番難しい)
・発達障害も1つのポテンシャルとして捉え、その能力を最大限発揮できる職場環境や仕
事を与える(これもハードルが高い)
Vol.16 社員の働きやすさを追求する~松岡カッター製作所視察報告
先日、市内にある㈱松岡カッター製作所さんへ企業視察してきました。
これは、県内でイキイキとした職場づくりを実践している先進企業を訪問視察するという県の取り組みです。
今回はそのときの様子や感想をお伝えします。
・時間有休制度
「学校行事などで、ちょっとだけ会社を抜け出したい…」
そんなケースが、実は結構あるのではないかと気づいた同社では、数年前から時間単位で有休を取得できる制度を導入。
結果、有休取得率は上がり、心配されていた業務への支障もほとんどないという。
運用に当たっても、労使協定を締結し、専用のソフトで有休管理をしていて特に問題ないという。更に来年は、社員の声を反映し「計画年休」を導入する予定。
・インターンシップを利用した採用
同社では、地元の技術系の高校や定時制高校、或いはポリテクセンターと提携して、積極的にインターンシップを取り入れている。
結果、毎年何人かの若手社員を採用することに成功している。
・社員の士気を上げる取り組み
勤続年数は長いほどよいということで、勤続5年から社内表彰している。また同時に、普段作業着の社員にスーツを着せる場を与えたいという思いもあるようだ。
アイデアコンクールも実践していて、実際に実用化した例もある。同業者間でのボーリング大会は40年近く続く伝統があり、毎年社内挙げての応援になるという。
【所感】
有休利用の選択肢を少し広げることで、働きやすい職場環境づくりを実現されています。特に今後、多くの企業にとって課題となる「親の介護による休業・離職」への対策としてもヒントになりそうです。
近年法定化された「時間単位年休」は、運用ルールが複雑で非常に使いづらく、私は安易に勧めませんが、会社独自に休暇制度を工夫することは一考の余地がありそうです。
若年者などの人材を安定的に確保する方法の1つは、地元の学校などと太いパイプを築くことですが、それがうまく仕組みとして機能しているところに感心しました。
人材不足がますます深刻化する中、これほど大きなアドバンテージはありません。
実際に工場内を見学させていただきましたが、若手から中堅、ベテランにいたるまで、実に豊富な人材が揃っている印象を受けました。
そして全体を通じて感じたのは、経営者の「信念」とか「本気度」、「覚悟」といったようなものです。
社員に働きやすい環境を整備・提供するには、コストや労力、時間がかかり、口で言うほどたやすくありません。結局は、経営者の信念や本気度次第だと改めて感じました。
今回のおさらいです。
・社員が働きやすくなるような(会社にとってもそんなに負担にならない)、会社独自の
仕組みを作れないか考えてみる
・安定した人材確保のために、地元の学校などと太いパイプを作れないか考えてみる
・何か新しい仕組みを導入する場合、結局は経営者の信念や本気度が問われる
Vol.15 コミュニケーションはまず自分を知る~エコグラムの活用
先日、県内某大学で心理学を教えている心理学者による人間関係についての研修を受けてきたのですが、その中でも「エゴグラム」が印象的でした。
エゴグラムとは、簡単に言えば性格検査です。円滑なコミュニケーションを図るには、まず己を知ることが大切。今回はこのエゴグラムについて簡単にご紹介します。
エゴグラムは心理学論からできたもので、信憑性があると言われています。
結構有名ですので、既にご存知の方もいるでしょう。ちなみに私は前職で、採用面接の際に使用したことがあります。
人の性格はいろいろな要素がありますが、エゴグラムは次の5つの要素に分けて考えます。
①CP…父親的で厳しい親の心(怒りっぽいガンコオヤジ)
②NP…母親的で温かい親の心(世話好きなオバチャン)
③A…冷静で論理的な大人の心(クールで合理的なオニイサン)
④FC…無邪気で自由奔放な子どもの心(いつも明るいヤンチャ坊主)
⑤AC…おとなしくて従順な子どもの心(言いたいことが言えないイイ子ブリッ子)
50個の質問に答え、①~⑤についてそれぞれ点数を出し、それを元にグラフ化します。その結果、自分が何かしらのタイプに分類されます。タイプは実に243種類あります。
例えば…
・NPを頂点としたなだらかな「ヘの字型」は、社会生活での適応性があり、他人との関
係も良好、ストレス耐性も強いタイプ(理想的なタイプ)
・「W型」はお人良しタイプ、「N型」はまじめタイプや依存タイプで、いずれもストレ
スをためこみやすい
・経営者や管理職はAを頂点とする「山型」、若年者は「台の字型」、現業者は全体的に
「低直線型」の傾向がある など
さて、自分がどんなタイプなのかを知ることは大変興味深く、結構盛り上がったりするのですが、それだけで終わってはあまり意味がありません。
その上で、円滑なコミュニケーションを図るために自分の弱みを変えていく努力が必要です。そのためのポイントを上げてみます。
・親の心(CPとNP)のバランスをとる(低い方を上げる)
・子の心(FCとAC)のバランスをとる
・親子(CP・NPとFC・AC)のバランスをとる
・全体的に点数が低い要素は上げる
・各要素はそれぞれメリットとデメリットがあり、点数が高くてもデメリットが出やすい
という傾向があるため注意が必要
(例えばCPで言えば、点数が高いほど「理想を追求する」傾向が強い反面、「偏見を
持ちやすい」という傾向もある)
・定期的に実施し、変化を把握する(その時々の状況や心情で結果は変わる)
ネット上で「エゴグラム」と検索すれば、簡単に診断してくれるサイトがたくさん出てきます。興味のある人は一度試してみてはいかがでしょうか。
今回のおさらいです。
・円滑なコミュニケーションを図るには、まず自分の性格を客観的に知る
・エゴグラムという性格検査を活用する方法がある
・エゴグラムで言う「親の心」「子の心」「親子」のバランスをとるよう努める
Vol.14 新卒採用は親をファンにする
今年から来卒の新卒採用スケジュール(採用に係る倫理憲章)が変わったことは既にご存知だと思いますが、実際にフタを開けてみれば、選考解禁の8月1日までに、既に約6割の学生が内定(内々定)をもらっていたという事実が民間調査で判明しました。
売り手市場、人材不足ということもあって、特に中小企業は早めに学生にアプローチしていかないと大手企業に優秀な(求める)学生をもっていかれます。
私の人事経験から言っても、早い時期にエントリーしてくる学生ほど「質」は高い傾向があります。ですから、企業として早めに動くことは大切です。
そして、内定を出してからがある意味本当の勝負。内定辞退は避けたいところです。
今回は、そんな新卒や若年者の採用ついて取り上げます。
今の新卒や若年者の傾向として「何でも親に相談する」というのがあります。
親も過保護になってきたのか、子供の企業や内定選びに口を挟むことは今や珍しくなく、決定権を握っているケースもあります。
私が就活した20数年前と比較すると、就活自体もそうですが、明らかに親子の関係性や「距離感」が違ってきています。
そんな中で、企業が新卒や若年者を採用する場合、何がポイントになるのでしょうか。
それは「親を会社のファンにする」ことです。
例えば…
・親への会社説明会や見学会を実施する
・親に対して、社長自ら会社や仕事に対する熱い思いを直接伝える
・「家庭訪問」して会社の思いを伝える
・本人から内定の承諾を受ける際、親の承諾についても確認する
・入社式に親を参加させる(本人が親への感謝の気持ちを伝える場を設ける)など
更に親を自社のファンにすることは、社員とのコミュニケーションにも良い影響を及ぼします。
人は、相手の親や身内をよく知っていれば知っているほど、その相手への接し方も違ってきます。より親身になって(親心で)接しようとする心理がはたらきます。
皆さんも、例えば近所の子供や知人の身内などに対して、まるで親や身内のように喜んだり心配したり、或いは厳しく叱ったりした経験があるかと思います。
新卒や若年者採用も同じです。
親を知ることで、より親身な態度で社員とコミュニケーションすることができます。
そのような意味でも会社が親と接する機会を設けることは重要です。その際、職場の先輩や上司も同席させると良いです。
更に本人も親の手前、「会社をやめたい」とは言い出しにくい効果もあるかもしれませんね。(内定辞退や俗にいう「七五三現象」を回避できるかも)
「いくら人材不足といっても、何もそこまでやらなくても…」と思われた方もいると思います。実は私もそう思います。むしろ、自ら意思決定できないような人材を企業は本当に採用する価値があるのかとさえ思います。
とは言え、時代は変わってきているのも事実。社員とのより円滑なコミュニケーションを図る意味でも一考の余地があるかもしれません。
今回のおさらいです。
・新卒や若年者の就活は、親の影響力が増してきている
・新卒や若年者を採用するには、親を自社のファンにする
・親を知ることで、社員に対してより親身なコミュニケーションが図れる
Vol.13 マネージャーの4つの役割
マネージャーには次の4つの役割があり、マネージャーは都度何かしらの役割を担う(演じる)ことが求められます。
1.船長としての役割
船長は、目的地を目指して常に最適な判断をし、乗組員に正しい方向性を示し、絶えず先頭に立って航海をリードします。もちろん、船の運航や安全管理などの最終的な責任も負います。
マネージャーも然り。会社やチームの目標達成に向け、都度適切な判断を下し、部下を力強くリードしていくことが求められます。
2.設計者としての役割
設計者は、船の仕様をまとめ図面を作製、部材を指定し、航海に耐えうる船を設計します。そのための専門知識を有し、品質やコスト等を含めて包括的に分析します。
マネージャーも然り。目標達成のために、解決すべき課題を冷静に分析したり、チーム編成や工程管理、コスト管理などのシステム思考をもつことが求められます。
3.指揮者としての役割
指揮者は、個々の演奏者の魅力を引き出しつつ、オーケストラ全体のパワーやエネルギーを最大限に発揮させます。そのために、個々の演奏者のみならずチーム全体を絶えず見渡しています。
マネージャーも然り。チームバランスを考えながら、それぞれの部下の長所を引出し能力を発揮させ、チーム力を最適化・最大化することが求められます。
4.教師としての役割
教師は、教科を生徒にわかりやすく教えたり、教育理念にそって熱心に教育・指導したりして生徒を育成していきます。厳しさの中にも優しさが溢れています。
マネージャーも然り。人材育成の理念の下、個々の部下と向き合い、愛情と厳しさをもって根気強く育成していくことが求められます。
今の自分が、この4つの役割をそれぞれどのくらい担えているか(演じられているか)を客観的に自己分析・評価してみるといいでしょう。(部下からも分析・評価してもらう方法もあり)
そして、自分に足りないと思う役割については、特に意識して今後のマネジメントにあたります。誰か別のマネージャーやリーダーに、その役割を任せる方法もあるでしょう。
今回のおさらい
・マネージャーには「船長」「設計者」「指揮者」「教師」の4つの役割がある
・客観的に自己分析し、不足する役割を特に意識してマネジメントにあたる
・マネジメントとは、己を知って自分自身をマネジメントすることでもある
Vol.12 効果的な部下の褒め方~成果でなく努力を誉める
現在、とある企業の人事制度の見直し・導入をお手伝いしています。それに伴い(社員数
が多いこともあり)プロジェクトを立ち上げることにしました。
先日開催したプロジェクトでは、リーダーやマネージャーの方に「部下のモチベーション
を高めるには」というテーマでグループディスカッションしてもらったのですが、「褒め
る」という意見がいくつか出ました。
ただ、どのように褒めればよいのか「褒め方」について迷っているリーダーが少なくない
印象を受けました。
確かに、ただやみくもに褒めればいいというものでもありませんよね。
そこで今回は、効果的な部下の褒め方について取り上げます。
例えば、普段「8」という成果しか上げていない部下が、ある時「10」という成果を上げ
たとします。
この場合、皆さんは上司として、この部下にどんな褒め方をしますか?
恐らく、多くの人は「10」という「成果」や「結果」を中心に褒めるのではないでしょうか。
しかし成果や結果ばかり褒めていると、次のような理由で逆効果(モチベーションダウン)になる場合があります。
・「次回はもっと成果を上げなければいけない、結果を出さなければいけない」といった
プレッシャーが生まれやすい
・思うような成果が出なかったときに「自分は能力不足なんだ」と思いやすくなる
(能力はすぐには上がらないため「やっても無駄だ」となりやすい)
それでは、どのように褒めたらよいのでしょうか。
その答えは「努力を中心に褒める」です。
そのような褒め方をすれば、思うような成果が出なかったときでも「成果が出なかったの
は努力不足のせいなんだ」と思いやすくなります。(努力不足は解消できる)
これらは、次のような「原因帰属」というモチベーション理論・実験から導かれるもので
す。
・モチベーションが高い人は、仕事が成功したときは「能力や努力」のおかげだと考え、
仕事が失敗したときは「努力不足」のせいにする傾向がある
・モチベーションが低い人は、仕事が成功したときも失敗したときも「外的要因(課題の
困難度や運など)」のせいにする傾向がある
その他、褒める場合のポイントをまとめてみます。
・些細なことでいちいち褒めない(褒め過ぎない)
・なるべく早いタイミングで褒める(フィードバックは早めに)
・明確な根拠に基づいて褒める
・朝礼など他の社員がいる前で褒める
・褒めるということは「承認」するということ(動機付け要因) など
普段ほとんど褒めない、褒めることが苦手だ、そんな人が多いのではないかと推測します
が、褒めるのにはお金も時間も手間もかかりません(笑)
これで部下のモチベーションが上がり、上司と部下の関係性が深まるのであれば、やらな
い理由はなかなか見つからないのではないでしょうか。
今回のおさらいです。
・成果ばかり褒めない。成果が出なかった場合に能力不足だと感じやすくなり、逆効果に
なる
・努力を褒める。成果が出なかった場合でも努力不足だと感じ、モチベーションを維持・
向上できる
Vol.11 増える安定志向~今どきの新入社員の傾向と対策
今回は、日本生産性本部が毎年実施する新入社員に対する調査結果を取り上げ、最近の新入社員の傾向と対策を探りたいと思います。
この調査はなかなか興味深く、毎回いろいろ考えさせられます。
こんな調査結果でした。
①給与体系・昇格制度
「希望する給与体系・昇格制度」という設問に対し、「業績や能力よりも年齢・経験を重視して給与が上がるシステム」(46.9%)、「年齢や経験によって、平均的に昇格していく職場」(41.2%)と年功重視の給与体系・昇格制度を希望すると回答した割合がそれぞれ過去最大となった。(更に注目すべきは、これら回答が年々増加していること)
②海外勤務
「海外勤務のチャンスがあれば応じたい」という設問に対し、「そう思う」(48.2%)が設問開始以来最低の数値となり、「そう思わない」(51.8%)を初めて下回った。
③仕事を通じてかなえたい夢
「自分には仕事を通じてかなえたい夢がある」という設問に対し、「そう思う」(58.9%)となり、前年(66.0%)と比較した変化幅が過去最大の7.1 ポイント減となった。(2010年の72.9%をピークに右肩下がり)
★詳細はコチラ→2015年度新入社員春の意識調査(日本生産性本部)
企業は通常、一定の評価をして社員の昇給や昇格を決定します。また、モチベーションを上げるため、一定の業績や評価に応じてインセンティブを支給したりします。
しかし①の結果を見る限り年々「安定志向」が増えており、評価やインセンティブによる
動機づけ手法は、新入社員にとってモチベーションダウンを招くこともありうる、ということを認識しておいた方がよさそうです。
私は仕事柄、中小企業へ賃金制度の提案や導入をすることがありますが、最近は「ステージ」別の賃金(昇給)をよくご提案します。簡単に言うと次のようなものです。参考にしてみてください。
・第1ステージ(20代)…昇給において、定昇(年齢給や勤続給など)のウェイトを高める。
・第2ステージ(30代)…昇給において、定昇+評価(業績や能力などによる昇給)をバランスよくする。
・第3ステージ(40代、管理職)…昇給において、定昇は極力なくし評価のウェイトを高める。
昇格についても、入社してから最初の数年は毎年昇格するような仕組みが、新入社員のモチベーションを保つには効果的かもしれません。
ちなみに、①のような傾向が年々強まっているのは、今は不安定な世の中ですから、将来にわたって生活不安を感じる若者が増えているとか、或いは人と争ったり比較されたりすることが苦手な若者が増えているのではないかと推測します。
②では、新入社員は「消極志向」が強いと読み取れます。
困難なことに対して、自らトライすることを避けようとする新入社員が増えているようです。
③ですが、①②と一緒に見たとき、心理学者マズローが唱えた「欲求の階層」が頭をよぎりました。
欲求の階層とは、簡単に言えば、人は低次の欲求が満たされるとその上の欲求に移っていく、というものです。(生理的欲求→安全の欲求→愛と所属の欲求→承認と自尊の欲求→自己実現欲求の順。ただし一概に当てはまるとは限らない)
①②から読み取れる傾向(「年功的な給与や昇格の方がいい」「海外勤務はしたくない」)は、言わば「安全の欲求」と言えます。
一方で③の「仕事を通じてかなえたい夢」は「承認欲求」や「自己実現欲求」です。
安全の欲求が満たされていない以上、その上の階層にまだ到達していないため、③は当然の結果なのかもしれません。
全ての新入社員が「安定志向」「消極志向」だとは思いませんが、総体的に見ればこのような傾向はあるのではないでしょうか。
「自律した人」「何事にも挑戦する人」を求める企業は多いと思いますが、苦労しそうですね。
今回のおさらいです。
・安定志向、消極志向の新入社員は年々増えている
・評価やインセンティブによる手法は、時として新入社員のモチベーションダウンを招く恐れがある
・新入社員の賃金は、評価やインセンティブなどで無理に差を設けず、定昇にウェイトをおく
・入社から最初の数年は毎年昇格させ、新入社員のモチベーションを保つ